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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十一話 後継者
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「……」
「それがきっかけとなり彼は頂点を目指し始めた。そして五年前から第五代自治領主としてフェザーンを支配している」
独り言のようなヴァレンシュタイン元帥の声だ。誰も口を挟もうとしない。
「……」
「彼は貧しい家の娘を自分の野心のために捨てましたが、忘れたわけではなかった。彼女が自分の息子を生んだことを知り、自分の傍に置いたんです。第六代自治領主にするために」
「……」
「ルパート・ケッセルリンクの母親は死んでいます。自治領主にしてみれば、彼女への贖罪の気持ちと父親としての愛情なのかもしれません」
「……」
沈黙が落ちた。本当の事なのだろうか。ボルテックの顔は青ざめている。思い当たる節があるのだろうか。元帥は一つ首を横に振るとボルテック弁務官に話しかけた。
「ボルテック弁務官、貴方はおそらく自治領主にオーディンの弁務官事務所を立て直せ、それが出来るのはお前しかいない、そんなことを言われたでしょう。私の暗殺も頼まれたかもしれない」
「……」
「でも、本当は貴方が邪魔だったんです。貴方がフェザーンにいる限り、ルパート・ケッセルリンクは貴方の影に隠れてしまう。だからオーディンに追い払った。これから時間をかけて後継者教育を始めるつもりでしょう。実績も経験も積ませるつもりに違いない」
「……」
「貴方が失敗すれば公然と切り捨てられる。成功したら、帝国を宥めるために貴方の独断だとして帝国に売り渡す、あるいは成功した瞬間に貴方を殺す……」
「……」
「信じる、信じないは貴方の自由です。多分、自分で事実を調べようとするでしょうが気をつけるのですね。ルビンスキーもケッセルリンクも貴方を邪魔だと思っている。周りが全て貴方の味方とは限りません……」
元帥の声だけが静かに流れた。その声は本当にボルテックを案じているように聞こえる。ボルテックの顔は青ざめ、彼の内心を表すかのように目が揺れ動いた。
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