54部分:第五十三話
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第五十三話
第五十三話 土の魔女
「私にやらせて、華奈子ちゃん」
「梨花ちゃん」
梨花が前に出て来たのであった。
「私今回あまり出番ないから。お願いね」
「けど」
「いいから」
そう言って華奈子を下がらせようとする。
「何かあった時はそれこそ頼むから。それでいいわね」
「そこまで言うのなら」
華奈子もそれ程強く断るつもりはなかった。それに頷くことにした。
「いいわ。じゃあ頑張ってね」
「有り難う。それじゃ」
梨花は華奈子に声を返した後で顔を正面に戻した。そして紫の魔女を見据えた。
「ということよ。いいかしら」
「私は別に構わないけれど」
紫の魔女は余裕の笑いを含んだ声で応えてきた。
「いいのね、本当に」
「ええ」
梨花は頷いた。
「土の魔女の誇りにかけて」
「それじゃあ私は」
言いながらフルートを構える。
「紫の魔女の名にかけて。行くわよ」
「ええ、いいわ」
こうして二人の戦いがはじまった。紫の魔女の笛から音楽が聴こえてきた。
それは幻想的で現実離れした曲であった。それが梨花を包んでいた。
「この曲、何!?」
「幻想交響曲ね」
「幻想交響曲」
春奈が華奈子に答えた。
「フランスのベルリオーズって人の作曲した曲よ。これはその一番夢、情熱ね」
「夢、情熱」
「この曲は確かに幻想的な曲だけれど彼女は何をするつもりなのかしら」
春奈は紫の魔女から目を離せなくなっていた。
「すぐにわかると思うわよ」
「梨花ちゃん」
そんな彼女に当の対峙している本人から言葉が返ってきた。
「だからゆっくりと見ていてね、そこで」
「いいの、それで」
「いいのよ」
今度はにこりと笑った。だが顔は紫の魔女から離しはしない。
「ベルリオーズの音楽がどんな力を持ってるか、確かめさせてもらうわ」
「いい心掛けね」
紫の魔女がそれを聞いて笑った。
「それじゃあ教えてあげるわ。幻想交響曲の力をね」
「どんなのかしら」
「それは」
魔女は梨花のその問いに答えた。
「これよ」
「梨花ちゃん!」
「これは・・・・・・どういうことなの!?」
何かが梨花を襲った。そして華奈子達四人の叫びが木霊した。
第五十三話 完
2005・10・4
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