第十九話 療養所その一
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第十九話 療養所
療養所は車から見えていた通り白く洋館と病院が合わさった様な造りだった、どちらかというと洋館の方が強いか。
周りは奇麗な緑の芝生と様々な花達が整えて置かれている。
岡島は車を駐車場に停めてから優花をその中に案内しつつだ、隣にいる彼に言った。
「ここがね」
「はい、療養所で」
「ここで暫く過ごしてね」
「ここの離れで、ですね」
「うん、個室というかね」
岡島は言葉を選びながら優花に話した。
「離れにあるお部屋でね」
「この療養所の中でも」
「昔はもう重病の人が入る場所だったらしいよ」
「重病の、ですか」
「結核とかのね」
そうした療養所に入る様な病気の中でもというのだ。
「そうした人がいる場所だったんだ」
「そうですか」
「かといって幽霊とかの話はないよ」
そうした人がいた場所でもというのだ。
「落ち着いたいい場所だよ」
「そうですか」
「奇麗ないいお部屋でね」
離れにあってもというのだ。
「気に入ってもらえると思うよ」
「そうですか」
「そして君のことはね」
優花の身体のことも話した。
「療養所の中でも僅かな人しか知らないから」
「そうなんですか」
「僕と所長さんと」
「他には」
「あとちょっとの人がね」
「ご存知なんですね」
「けれどね」
この療養所の中でもというのだ。
「知ってる人は少ないよ」
「そうなんですか」
「君は結核ってことになってるから」
「その病気ですか」
「実際に今も結核の人が入ってるしね」
かつての様にだ。
「だからだよ」
「僕もですか」
「そうしたことになってるから」
結核ということにしてというのだ。
「そこにいるから」
「それじゃあ」
「うん、君の世話もそうした人達がしてくれるからね」
「僕のことを知ってる」
「だから安心してね」
「それでここでもですか」
優花は療養所の庭の間にある道を進みつつ岡島に尋ねた。
「僕のことはですか」
「そう、殆どの人がね」
「知らないんですね」
「君のことはかなり特別なことだから」
身体に起こっていることはというのだ。
「それでだよ」
「この療養所でもですか」
「うん、そうなっているんだ」
「ごく限られた人だけが知っていて」
「君の世話をするよ」
「そうしてくれるんですね」
「責任ある人や信頼出来る人しかね」
それこそという言葉だった。
「君のことは知らないよ」
「外に知られたら危ないから」
「こうした話は用心しないといけないからね」
「壁に耳ありですね」
「そう、障子に目ありだからね」
この言葉もだ、岡島は出した。
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