巻ノ五十一 豚鍋その十一
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そのうえでだ、十勇士達に言った。
「ただ、敵の数は多い」
「だからですな」
「これまでで最も用心し」
「そうしてですな」
「じっくり見ますか」
「そうしますか」
「皆よいな」
その十勇士達への言葉だ。
「迂闊に近寄ってはならぬ」
「はい、相手が相手です」
「五万の薩摩隼人です」
「下手に近寄っては気付かれます」
「そうなりますから」
「そうじゃ」
だからだというのだ。
「よいな」
「はい、わかりました」
「それではですな」
「ここは、ですな」
「行きましょうぞ」
「その様にな」
幸村は十勇士達と共に博多に行く前に島津家の将兵達が集まっている場所に向かうことにした、その上で彼等の軍勢も見るのだった。
五万の兵が集まる場所はすぐにわかった、最早気配が違っていた。
「筑紫の方ですな」
「岩屋城に向かう方からです」
「凄まじい気が起こっています」
「これ以上はないまでに」
「間違いない」
幸村もだ、その気がする方を見て言った。
「あそこにおる」
「ですな、普通の者ではわかりませぬが」
「忍の術を精進しているとです」
「気もわかってきますな」
「まさに」
「武術も同じじゃ」
そちらを極めてもとだ、幸村は十勇士達に話した。
「やはりな」
「気がわかる」
「気を発することが出来る様にもなりますし」
「十八般を精進していきますと」
「そうなりますな」
「うむ、それでわかったが」
それがというのだ。
「あの気はな」
「ですな、気が違います」
「凄まじいです」
「九州を飲み込まんばかりの」
「壮絶なものです」
「あの気の方向じゃ」
幸村は断言した。
「そこに向かうぞ」
「はい、そうして」
「あそこに行き見ましょうぞ」
「薩摩隼人の軍勢を」
十勇士達も応える、こうしてだった。
彼等はその気がする方に向かった、それは只の五万の気ではなかった。九州を制圧せんとする五万の猛者達のそれであった。
巻ノ五十一 完
2016・3・27
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