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第四十九話
第四十九話 二匹の獣
「はじめまして」
その目の主達が五人に対して挨拶をしてきた。
「私達は」
「紫の魔女様の使い魔です」
「貴方達が!?」
「はい」
二匹の獣はそれに頷いた。
「私はタミーノ」
一匹が名乗った。その姿が闇の中から浮き上がる。それは見事な毛並みの黄金色の狐であった。
「私はフィガロ」
もう一匹も。やはりその姿が浮き上がる。それは漆黒の立派な毛色の狸であった。
「私達が紫の魔女様をお守りしております」
「そして今回はそちら様方の相手を務めさせて頂きます」
「へえ、あたし達とやるつもりなの」
「はい」
二匹は華奈子にそう答えた。
「それで宜しいでしょうか」
「相手をしてくれるんならそれでいいわ」
売り言葉に買い言葉か。華奈子はそう返した。
「やってやろうじゃない。そちらこそ覚悟はできているんでしょうね」
「勿論です」
狐のタミーノが答えた。
「貴女さえよければ」
「私共に不服なぞありません。これも紫の魔女様の為」
「随分忠誠心が高いみたいね」
「否定はしません」
華奈子にまた答えた。
「私達が認めたのですから」
「それだけの能力はお持ちだということです」
「それじゃああんた達もかなりなものなのね」
「今から御覧にいれましょう」
フィガロが言った。
「皆様方、いいでしょうか」
「来るのね」
「はい」
二匹は木の下に降りてきた。そして五人と対峙する。
「行きますよ」
「いいわ」
華奈子は二匹に対して言った。
「何時でも。さあ、どっちから来るの?何なら両方でもいいわよ」
「それでは僭越ながら」
まずは狐のタミーノが出て来た。
「私が。行きますよ」
「来なさいな」
「では」
急にタミーノの身体が妖しげな紫色の霧に覆われだした。そしてそれは五人の周りも取り囲む。
「これは」
「これこそ我等が狐族に伝わる妖術」
彼は言った。
「とくと御覧あれ」
霧は完全に華奈子達を覆った。そしてそれは次第に五人を惑わしはじめたのであった。
第四十九話 完
2005・9・28
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