暁 〜小説投稿サイト〜
俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
52.第三地獄・幽明境界
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いい的になる筈の超巨体のままフィンと同程度の回避力を維持している。
 大きな物体が落下する際というのは見る分にはゆっくりに見えるが、それは単純に物体が大きいから縮尺的にそう見えるだけであって現実にはかなりの速度で落下している。黒竜があの図体でフィンと同等の『回避力』を維持するためには、実際にはフィンが霞んで見えるほどの速度で移動しなければ実現できない。

 正真正銘、黒竜は化け物だ。

「そんな事ハどうでもいい。殴ル方法を教エろ。デなければ十全に楽しめぬ」
「お前もオーネストとは違う意味で人の話を聞かないタイプだな……まぁいっか。まずは俺の鎌だが、お前は当然鎌なんて使わんから別の方法だな」

 アズの鎌は一度黒竜の足を一本両断した。その後すぐに黒竜は蒼い炎を放ち五体満足に復元された。しかしそれ以降黒竜は鎌を異常に警戒するようになっている。つまり、あの再生は一度っきりでもう出来ないか、もしくは再生するのに大きなエネルギーを必要とするから何度も使えないと考えられる。

 アズは過去に聞いた話を思い出す。ダンジョンは神の気配を感じたとき、近くの階層で最も強力な魔物の魔石に直接エネルギーを送り込むと同時に神の抹殺命令を下すらしい。『黒化』とも呼ばれるその現象で無尽蔵のエネルギーを得た魔物は足がもげても短期間で再生できるとのことだ。
 無論その中核となる魔石さえ砕けば撃破可能だが、逆を言えばそれほどに特殊な状況でなければ高位の魔物も欠損した体の再生はおいそれと行えない。何より黒竜はダンジョンからの支配を受けず自立意識を持っているという話だから、この推測は間違っていない筈だ。

 鎌が効くのならやはり現在の黒竜は純エネルギーであるアストラル体と実体の境を彷徨う状態なのだろう。魔石の在処さえ曖昧で、串刺しにしても死ぬかどうか分かりはしない。どのような経緯であんな力を発揮できるようになったのかは不明だが、アストラル体に直接ダメージを与える方法など殆どない。
 逆に、少なくとも現在の黒竜は熱量を持った存在として目の前にいるのだから、熱量に干渉する魔法の類ならば通常以上に効果が見込める。オーネストとリージュはそのための対策を立てている筈だ。若干イチャつきながら。

 と――アズはふと思いつく。

「鎌はダメ、魔法も今は無理となると――あっ、俺の鎖を腕に巻き付けたらイケるんじゃね?」

 時間稼ぎと囮には向かないために使っていなかった『選定の鎖』だが、これは元々実体・非実体の両方に干渉出来る性質を持っている。つまりよりアストラル体に近い性質に変質した現在の黒竜に鎖は相性がいいはずだ。
 アズはすぐさまユグーの手に巻き付けてあった鎖に触れ、力を注ぎ込む。鎖はアズの魂の一部。魂の指令を受けた鎖はすぐさま形状を変更し、鎖帷子(くさりかたびら)
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ