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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
52.第三地獄・幽明境界
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、な」

 今の俺はどんな表情をしているんだろう。
 そんな漠然とした疑問を心の隅に抱きつつ、オーネストはリージュに続いて地面を踏みしめ、放たれた矢のようにフロアを駆けだした。



 = =



 オーネストとリージュの会話より数分前、時間稼ぎをしている二人はあわよくばそのまま黒竜を倒そうという気迫で激戦を繰り広げているが、その戦況は芳しいものではなかった。

 アズは時間稼ぎも兼ねて『徹魂弾』と『死神之鎌』を併用しながら攻撃を続けているが、黒竜は『死神之鎌』の斬撃全ての直撃を避けている。その影響で『徹魂弾』は体に命中しているが、鱗が剥がれるだけでそれ以上の効果はない。『徹魂弾』は対象物質が何であろうと命中したそばから完全に対象を殺すが、内から湧き上がるエネルギーを相手にすると焼け石に水となる。
 ゲームのように言うと『徹魂弾』とはあらゆる防御を貫通して固定的なダメージを相手に与えるので防御は不可能だが、消滅した部分を再生させてしまう相手には相性が良くない。大抵の魔物はそれでも数秒でハチの巣になるが、現在の黒竜はあまりの高熱に肉体と炎の境が曖昧になっているため消しても消してもカラダがなくならない。
 ユグーは超高熱で全身が焼け爛れているが、戦ううちにスキルが炎への凄まじい耐性を得ているのか、炎の影響をそれほど受けてはいない。だが炎が効かないことと炎に有効打を持っていることは別の問題で、その表情には微かな不満が現れていた。

「拳に手応エガ無イとは………体の殆どがマグマと炎の中間を彷徨ッテイルのか!?」
「ったく、質量保存の法則は無視かよ!!こいつはまるで魂と肉体を全て溶かして一つにしているみたいだ!!生物的な構造を保ちつつ中身は定型がないなんて、ここまで来ると物質的実体のないエネルギー生命体の域だぞッ!!」

 叫ぶアズの表情には苦悶が浮かんでいる。まるで有効打が打てないのに自分自身は時間稼ぎのために魂を消耗しているのだ。むしろそれでも全く動きが鈍らないことを賞賛すべきなのだろう。消耗が激しいアズと致命的な相性の悪さを察したユグーは、事態を打開するためにここで初めて合流した。

「おい、アズライール。あれはどうすレば殴れる。スライムのように核ハあるのか」
「悪いがない。むしろ鱗の中身が全部核みたいなもんだから余計に性質が悪ぃ。『死神之鎌』を避けてるってことはダメージはないでもないんだろうが、アイツ回避能力が高すぎる。あの図体でロキたんとこのフィン並みかそれ以上の回避力だ」

 単純に『勇者(ブレイバー)』のフィンと同程度の俊敏性だというなら相当な化け物だが、アズが言っているのはそういうことではない。フィンは非常に小柄かつ種族的に俊敏性が上がりやすい性質があるから恐ろしく動きが速いのだ。なのに黒竜は本来なら
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