46部分:第四十五話
[8]前話 [2]次話
第四十五話
第四十五話 大きな木の下で
美奈子は今日も裏山の樫の木の下で笛や歌の勉強をしている。殆ど毎日続けているそれは日課と言っても差し支えない程である。
「ふう」
練習を一通り終えてとりあえず一息つく。
「今日は音楽の方は調子がいいわね」
そして音楽に関しては満足した。
「けれどもう一つは」
「もう一つがどうかしたのかい?」
「誰!?」
すぐにその声に反応して辺りを見回した。
「誰かいるの?」
身構える様に笛を手に取った。そしてそれを吹こうとする。
「おやおや、笛でどうするつもりなんだ?」
声はそれを見ておかしそうな声を出した。
「何かできるのかい?」
声はもう一つあった。それ等は両方共美奈子に対して向けられていた。美奈子もそれがわかっているから身構えているのであった。
「来るつもりなの?」
「そうだとしたら?」
皆この問いに対して逆にそう言葉を返してきた。
「どうするつもりなんだい?」
「私にも考えがあるわ」
「へえ」
二つの声はそれを聞いて面白そうに笑った。
「面白い。何をするつもりなんだか」
「見せてもらおうかな」
「私の笛は見せるものじゃないわ」
毅然としてそう言い返した。
「聴かせるものよ。聴く覚悟はあるかしら」
「覚悟か」
「そうよ。それがあるなら聴かせてあげるわ」
「面白いね」
「ああ。どうやら噂通りだね」
「噂!?」
美奈子はその言葉を聞いてハッとした。
「それは一体どういうことかしら」
「あんたの噂は聞いてると」
声の一方がそう言った。
「色々とね。これでわかるかな」
「ええ」
二つの声が何を言いたいのかよくわかっていた。
「それで何をしたいのかしら」
「実はね」
声の一つの主が姿を現わした。
「話があるんだ」
そしてもう一方も姿を現わした。茂みからヌッと姿を現わしたのだ。
「話!?私によね」
「そうだよ」
「よく聞いてね」
「ええ」
こうして美奈子と二つの声は裏山で話をした。それで何が変わったか。それはまだわからない。だが彼女にとっては実に大きな変化となったのであった。
第四十五話 完
2005・9・18
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ