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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十話 闇に蠢く者
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。元帥は苦笑したまま言葉を続けた。
「まあ、ずっと見てきましたからね。それなりに想い入れは有ります」

「ずっとですか」
「ええ、ずっとです」
不思議な表情だった。遠くを見るような、何かを思い出すような、何処か切なく、哀しい表情。それなのに口元には微かに笑みがある。一体二人には何が有るのだろう。


どのくらい時間が経ったのだろう。元帥が私を見た。先ほどまでの不思議な表情は無い、何処か笑い出しそうな、おかしそうな表情をしている。
「ケスラー提督、私を騙しましたね。皇帝の闇の左手は解散していないでしょう」

そう言うと元帥は耐えられないように笑い出した。
「元帥閣下……」
「嘘は無しですよ、一度騙したんです、もう十分でしょう」

とうとうばれたか、思わず苦笑が出た。
「やはり宮中での御落胤騒動が原因ですか」

「軍務尚書も統帥本部総長も不思議そうな顔をしていました。憲兵隊も情報部もお二人の命令で動いていないということです。にも関わらず陛下はブラウンシュバイク公達の動きを知っていた。そしてケスラー提督が私のところに来た。逆効果ですね」

逆効果か、確かにそうだ。どうやら思いのほかに焦っていたらしい。陛下から事の顛末をTV電話で聞いたとき、こちらも笑わせて貰ったが、どう考えても元帥が疑いを持つだろうと思った。何とか元帥の疑惑を逸らそうとしたのだが、彼にとってはむしろ確証を得たようなものか……。

「解散を決定したのは事実です。その準備もしました。ですが事情が変わって存続する事になったのです」
「というと」

「元帥閣下が小官をローエングラム伯の参謀長に推薦した事が原因です」
「?」
元帥は訝しげな表情をした。

「実は小官がグリンメルスハウゼン子爵の後を継いで皇帝の闇の左手を率いる事になっていました」
「それで?」

「当初、グリンメルスハウゼン子爵の死後も小官はオーディンにいる予定でした。ところが、当時憲兵隊にいた小官を快く思わない有力者がいました。彼らの意向によって小官は辺境星域に行く事になったのです」

「……」
「もし小官が辺境星域に行っていたら、いえ行くはずだったのですが、そうなると統率者がオーディンに居ない事になります」

「なるほど、それは少々不便でしょうね……」
元帥は軽く頷きながら答えた。
「はい、しかし、だからといって無理に小官をオーディンに置こうとすると不自然な人事に誰かが気付くかもしれません」

「……」
「陛下も当時はあまり政治に関心をお持ちではありませんでした。それで面倒だと仰って解散することになったのです」

「ところが私がケスラー提督をローエングラム伯の参謀長に推薦した。つまり統率者がオーディンに居る事になった」
「そうです。それで解散は急遽取
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