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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十話 闇に蠢く者
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てくる以上、足止めが必要です。その役目は私が行なう事になったでしょう。五個艦隊で九個艦隊を相手にすることになります」
「……」
「私が率いる五個艦隊は戦力を磨り潰したでしょうね、その後にローエングラム伯の率いる本隊が敵を叩き潰す」
「……」
一瞬だが沈黙が落ちた。私と元帥は静かに視線を交わす。元帥が微かに頷いた。
「ローエングラム伯はオーディンの混乱を鎮め、反乱軍を打ち破った英雄としてその地位を確立する事が出来るでしょう。一方私は戦力を磨り潰し見る影も無い状態になっている。場合によっては戦死していたかもしれない」
淡々と元帥の声が流れる。なんというおぞましい話だろう。有り得ないとは言えない、オーベルシュタインにとって元帥は相容れない存在だ。あの男がそれを考えたとすれば、確かにオーベルシュタインは毒だ。敵だけではなく味方も傷つけ殺す陰惨な毒。
嫌悪を振り払うように頭を振った私に元帥の声が聞こえてきた。
「でも、本当はそうではなかったのかもしれません」
「それは、どういうことです?」
思わず私は元帥を見た。元帥は少し戸惑ったような表情で言葉を続けた。
「もしかするとオーベルシュタイン准将は、陛下が何時亡くなるかではなく、何時まで生きているかを確認したのかもしれない……」
「……」
何時まで生きているか、どういうことだろう。
「今日、宮中で陛下に拝謁したとき思いました。御元気になられた、陛下は私の予想よりずっと長生きをされるかもしれないと」
「それは、小官も同感ですが」
私の言葉に元帥は柔らかく微笑んだ。
「そうなると、グリューネワルト伯爵夫人はずっと後宮に居る事になりますね」
「!」
思わず私は元帥の顔を見た。元帥も私を見ている。元帥の顔からは微笑みは消えていた、視線も先程までの静かな視線ではない。強く厳しい視線だ。
「私は、どうすれば反乱軍を退け、国内問題を解決できるかを考えていました。オーベルシュタイン准将は、どうすればローエングラム伯を覇者に出来るか、それを考え続けていた」
「……」
「彼にとって大事なのは、どうやって自分の思うようにローエングラム伯を動かすか、です」
「その鍵が、グリューネワルト伯爵夫人ですか」
元帥は静かに首を縦に動かした。
「このままでは、ローエングラム伯は覇者になれない。そして、グリューネワルト伯爵夫人も宮中に居続けることになる。それを止めるためには……」
それを止めるためには……、簡単なことだ。元帥を殺す、それしかない。思わず溜息が出た。元帥も同じように溜息を吐く。
陛下が存命である限り、グリューネワルト伯爵夫人は後宮に居るだろう。元帥が生きている限りローエングラム伯は頂点に立てない。頂点に立てなければ陛下からグリューネワルト
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