第二十七話
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無いくせのか、コイツは。
「その代わり……依頼が終わったら、毎回ここに来て、装備のメンテナンスをさせてほしい」
心臓が早鐘を打つ。
その表現が、もっとも今のあたしを正しく表現しているだろう。
後は、たった二文字の言葉を告げるだけだ。
昨日は言えた。
心の中でも言えた。
そして、あたしがようやく口を開こうてした時に。
「……こっちからお願いしたいぐらいだ」
ショウキの言葉が、あたしの言葉を遮った。
そのショウキの言葉を、あたしは脳内で必死に反復する『こっちからお願いしたいぐらい』、と。
それは、それはつまり……
「これからは、この店を常連にさせてもらう」
「……あ、うん」
早まってしまったが、考えてみればまだショウキには毎回あたしの店に来て欲しいとしか言ってない。
だったら、その答えを返されるのが当然であって……はぁ。
「で、何だ? なんか言おうとしてたろ?」
「ふぇ!?」
流石は攻略組、相手の一挙手一投足を良く見ている……じゃなくて、ええと、その……
「言いたくないなら言わなくて良いさ。それより、やっぱ無料っていうのは……」
……せっかく決意したのに、言うタイミングを逃してしまった。
だけど、これから毎回あたしの店に来てくれるなら、きっとまたチャンスはある。
うん、そう思うことにしよう。
――これまであたしは、ただここで暮らしているだけで、生きてはいなかった……ここは、所詮仮想空間であり、現実とは違うと勝手に決めつけて。
だけど、ショウキのおかげで人の温もりを思いだして、ようやく明日からは、この世界で真に生きていけるのだと思う。
ありがとう、ショウキ。
リズベットを、篠崎里香をこのアインクラッドで人の温もりを与えてくれて。
そして、いつか絶対に言うんだ……今回は言い損ねた、あの二文字を。
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