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雪女
第三章
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「あんたも無理はしないでね」
「寝るのも受験のうちね」
「健康管理もよ」
「それでもお母さん寝過ぎよ」
「寝るのが一番気持ちいいのよ」
 こう娘に言ってだった、由貴は寝室に向かった。小雪もコップを洗ってから自分の部屋に戻って勉強を再開した。
 母から聞いた話を桐子に話すとだ、じゃあやってみようという返事がきてだった。
 土曜の塾が終わった夜にだ、二人はまずは天満宮の入口に来た。二人共制服の上にコートを羽織り手袋も帽子も被っている。それにだった。
 桐子は小雪の黒ストッキングに覆われた脚を見てだ、彼女に聞いた。
「ストッキング何枚履いてるの?」
「二枚、それと毛糸のパンツ履いてるから」
「それで靴下も毛糸の」
「それにしたの」
「ははは、あたしと一緒ね」
 桐子は小雪の返事に笑って返した。
「あたしも二枚穿きでね」
「毛糸のパンツに靴下」
「母さんが寒いからって言ってね」
「そうよね、制服の下もね」
 厚い生地のコートの下もというのだ。
「セーター着て」
「完全装備ね」
「あと」
 ここでだ、小雪はあるものを出してきた、それは使い捨てカイロだった。
 そのカイロを桐子に差し出してだ、彼女に尋ねた。
「使う?余分に持って来たから」
「あっ、いいの?」
「ええ、お母さんが持って行けって言ってね」
「余分に持ってるから」
「使う?」
「悪いな、じゃああたしもな」
 桐子は微笑んでだ、長い赤のマフラーを出した。そして。
 小雪の首に巻いて自分の首にも巻いてだ、小雪の小さな身体を抱き寄せて言った。
「マフラー貸すな」
「あっ、暖かい」
「そうだろ、あんたがカイロ貸してくれてな」
「桐子ちゃんがマフラー貸してくれて」
「一緒に行こうな」
「四天王寺までね」
「雪女出るんだよな」
 桐子は小雪に彼女が自分に言ったことを確認した。
「そうだよな」
「そうみたいよ」
「けれどこれだけしたら寒くないだろ」
「我慢出来ない位は」
「それじゃあ行こうな」
「ええ、それじゃあ」
 二人で話してだ、そのうえで。
 二人で四天王寺まで歩きはじめた、地図は二人共持っていて現在地も確認しつつ先に先にと歩いていった。
 出発してすぐにだ、何処からか風が来て。
 雪も出て来た、桐子は傘を出して小雪に言った。
「夕方まで晴れだったのにな」
「これってやっぱり」
「雪女だよな」
「そうよね」
 小雪も答えた。
「やっぱり」
「だよな、けれどな」
「傘持って来てたの」
「折り畳み式を。入れよ」
 小雪に自分の傘の中に入る様にも勧めた。
「幾ら重装備でも雪は辛いからな」
「そうね、そういえば」
「そういえば?」
「これ」
 小雪は今度はイヤホンを出してきた、耳を覆うものだ。それ
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