SIDE:A
第五話
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それまでの和やかな空気が一瞬で凍結し、まるで極寒の地にいるような寒気を感じるようになった。
主に冷気を発しているのは両サイド。うちのママンとクーさんです。
「……ミナト? 私その話初耳なんだけど?」
「主よ。まさかとは思うが、妾の知らぬうちにその女子を手篭めにしたのではなかろうな?」
あの、クーさん? なんで僕に言うんですか?
ジトッとした目を父さんと俺に送ってくる女性たち。
父さんは冷や汗を流しながら引き攣った笑みを浮かべ、俺は素知らぬ顔でトーストにジャムを塗った。だって俺悪くないし。
「いや俺も初耳なんだけど。だからクーちゃん、そんなに睨むなよ」
イチゴジャムを乗せたトーストを差し出すと、ふんっと鼻を鳴らし不貞腐れながら被りついた。
「……? お兄ちゃん、こんにゃくしゃってなに?」
「汐音はまだ知らなくていいんだよ」
口元についてるジャムを拭いてあげる。無垢な妹よ、どうかそのまま健やかに成長してください。
「それで? 一体どういうことなのかしら」
俺も気になります。婚約とか俺には無縁だと思ってたし。
コーヒーで喉を潤した父さんはのほほんとした能天気な顔で語った。
「随分前に日向の当主と飲みの席で語ったんだけどね、その……つい酔っ払っちゃってハルトと日向の姫様を婚約させちゃおうって約束しちゃったんだ。もちろん当人同士の意思が第一だから無理強いはしないけどね」
「日向?」
思いがけない名前が飛び出てきて、つい反応してしまった。
父さんはニヤニヤと変な笑みを浮かべている。
「聞いたよハルト。昨日活躍したそうじゃないか。昨夜、日向の当主がやってきてね、攫われた日向の姫様をハルトが助けてくれたって聞いたよ」
「あらまあ。すごいじゃないのハルト!」
「なんじゃと? 聞いておらんぞ主よ。なぜ妾を連れて行かなかったのじゃ!」
母さんはともかくクーちゃんは寝てたじゃないか。
「まあそれでね、お相手はヒナタちゃんっていって汐音と同い年の娘なんだけど、淑やかな娘だって聞いてるよ。まだヒナタちゃんは幼いから、六歳になったら一度お見合いしたいって先方から要望があったんだ。ハルトにとっても悪い話じゃないから、一応そのつもりでいてくれないかな?」
「六歳ってことは、あと二年後か。わかったよ。」
二年後ということは俺は八歳だな。まあ、ぶっちゃけヒナタちゃんならお見合いは前向きに考えますよ、ええ。もちろんヒナタちゃんの気持ちを優先するけどね。
「ヒナタちゃんなら大丈夫ね。ハルト、頑張るのよ!」
「
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