SIDE:A
第五話
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一瞬の拮抗。唾競り合いを制したのは俺だった。
「ふっ!」
体格差をものともせずに振り切り、男を弾き飛ばす。
空中で体制を整えた男は危なげなく着地した。
男の口元はマスクで覆われているためその表情を窺い知ることは出来ないが、別段動揺しているようには見えない。仲間が二人殺されても平常心でいることから、男は相当の手練のようだ。
油断なく忍刀を構えながら、男が平坦な口調で呟く。
「末恐ろしいな。その歳でこれほどの実力を持つ子供がいるとは。少年、何者だ?」
「ただの子供だよ」
「ふん。もしその言葉が本当なら木の葉の里は化け物の巣窟になるな」
「なら逃げ帰るかい? いいぜ、別に尻尾を巻いて逃げても」
「そうはいかない。受けた任務は必ず遂行するのが我らの矜持」
俺の安い挑発を鼻で笑う男。心理戦の駆け引きもできるようだ。
男を注意深く観察しながらも周囲の気配を探っていると、男の後方――すなわち里の方角から人の気配が近づいてきているのがわかった。恐らくヒナタちゃんの関係者だろう。
男も気配を察知したのか、忌々しげに舌打ちをした。
「ちっ、このままでは追いつかれるか。致し方ない、強行突破を――」
「隙あり」
「なにっ……! ぐおおぉぉぉぉぉうぅっ!?」
チラッと後方を見たのが運のツキ。僅かな隙をついて瞬身の術で接近した俺はお馬鹿な男の股間を蹴り上げた。男の急所は世界共通。
肉体活性した蹴撃に悶絶する男は白目を剥きながら崩れ落ちた。
「ヒナタちゃんは無事だし、上々の出来だな」
初の実戦という面でも。
前世も含めて始めて人の命を手に掛けたが、思っていたほど衝撃はなかった。事前に覚悟を完了していたというのもあるが、殺らなければ殺られるを地でいく世界だし。
元日本人としての感覚が大分擦れてきている現状に嘆けばいいのか判断に迷う。
(まあこの場合はよかったとするかな)
とりあえず、里の人が来るのを待ちますかね。
鼻歌を歌いながら気絶している男を鎖で縛り上げる俺であった。
「――ヒナタっ!!」
木々の間を縫いながら血相を変えた男性が一人飛び込んできた。
ヒナタちゃんと同じような着物を着ており、腰まで伸びる長い黒髪。そして、日向一族の特徴である白目。
ヒナタちゃんを追ってきた男性は誘拐犯たちが地面に倒れているのを確認すると、傍に立っている俺を見て唖然とした。まあこんな子供が他里の忍を倒したのだから無理もないか。
「こんばんは」
「あ、ああ。こ
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