第7話、謁見
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とある雨の日の午後、俺は新無憂宮の東苑で銀河帝国皇帝フリードリヒ四世に謁見していた。
「ブラウンシュヴァイク公、息災のようだな」
葡萄酒の香が漂う謁見の間で、玉座に座る顔色の悪い皇帝が億劫そうに口を開いた。数日前に泥酔している皇帝と短い会話を交わしたばかりだが、その内容が皇帝の記憶に残っているか、はなはだ疑問だ。
「皇帝陛下の御威光のおかげをもちまして」
「それでどのような用件であったか」
「陛下。ブラウンシュヴァイク公は麾下兵力の大規模な増強に加え、陛下の臣の力を借りたいと申しています」
皇帝の傍らに控えるリヒテンラーデ侯爵クラウスが、やたら陛下の臣の部分を強調しながら俺に聞こえる声で耳打ちした。無論聞こえてない振りをするが、眉間の深い皺は相当なご不満の証左だろう。
とはいえ、俺もリヒテンラーデ候の対応に不満を覚えている。その点ではお互い様だ。
「おー、そーであった。ブラウンシュヴァイク家の軍隊の戦力増強及び、訓練に正規軍を使いたいということであったな」
皇帝は二日酔いどころか半分酔っ払っている感じだ。それでもほんの少しは軍備増強計画に興味を持ったのか、あるいはリヒテンラーデ候に誘導されたのか、米神を抑えながら理由を問いただしてきた。
「それにしても急な話だ。ローエングラム伯の大戦果の影響でも受けたか」
皇帝の指摘は間違いではない。だが、根本的な理由は誰かさんの煌びやかな女性遍歴にある。
よりによってその最終章に、獅子の尾を踏むような相手を載せたことが、今日の俺の苦労に繋がっている。
しかも、はなはだ羨ましいことに、皇帝は獅子の尾を踏み続けたまま、自らの不摂生で畳の上で死ねる、ある意味最強の勝ち抜け伝説を歴史に残す人でもある。
せめて迷惑料として寵姫の家族に対する最低限の保護を止めて欲しいところだが・・・
まあ、現実問題としてこちらの動きを妨害をされないだけで十分に満足するべきか。
「陛下の慧眼に感服致します。ローエングラム伯爵のおかげで領軍の実態を調査する気になりましたゆえ。その結果、質量共に領軍の見直しの必要性を感じ、こうして恥をしのんで陛下へのお願いに参りました」
いくら何でもはっきりとラインハルトを敵視する発言は出来ないからな。あくまでも兵力不足及び練度不足の是正で押し通す。
「ほう。そんなに弱体化していたか」
「お恥ずかしい話ですが近頃若手貴族を中心にいささか軟弱者が増えております。そこでいつ何時でも反逆者と戦う覚悟を、人生経験豊富な先輩貴族が範を示さねばと思いましたところ、逆に自らの慢心を感じることになりました。今は自らの領軍を鍛えつつ若手を鍛える所存です」
ラインハルトの脅威に備えていることをオブラートに包んで伝えると、皇帝の濁った目が少年のようにキラキラと輝いた・・・ように見え
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