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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第147話 温泉にて
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を信じるのなら。そして、俺に蘇えった(インストールされた)記憶が正しいのなら、俺と、その二月にこの世界に流されて来た武神忍と名乗る少年は(近似値)で繋ぐ事が出来ると思う。
 しかし――
 タバサはおそらく、前世で預けられた(捨てられた)僧院から彼女を攫った前世の俺を、今の武神忍と言う偽名を名乗る少年の中に見付け出している。そちらも当然、有希と同じ。
 万結も同じ。彼女に今の名前を与えたのは現在の俺ではない、しかし、かつての俺。ハルヒも多分、似たような物。
 すべての少女たちは皆、現実にここに存在している俺を瞳に映しながら、その向こう側にかつて俺であった存在の姿を映しているように感じて……。
 この上、弓月さんも……。

 確かに何もないトコロから科学的にはあり得ない記憶が蘇えったのなら、自らの記憶に対する信用度も多少は高くなると思う。しかし、俺の場合は外部の記憶媒体からインストールされた記憶だけに、それが絶対にかつて(前世)の自分自身が経験した物だと言い切れない部分が存在している。
 もしかすると魂の部分では全く違う、同じ位置に立たされただけの人間に、その経験を無理矢理にインストールしただけではないのか、……と言う疑問が常に付き纏い……。

「それにしても……」

 くだらない事に拘っていないで現状を受け入れ、それなりに上手くやって行く方法がない訳ではない。普通の場合、そう言う風に居り合いを付けて行くのでしょうが……。
 但し、それでは俺の漢としての矜持が許さない。
 まして、英雄と呼ばれた人間が如何にして生き、そして死んでいったのかを理解出来るのなら、矢印みんなこっち向き。世界はすべて思うがまま。あのねぇちゃんも、このねぇちゃんも。みんなみんなワイのもんや! ……などと浮かれて居る(アホ)に未来は絶対に訪れない事も知っているはず。

「……みくるちゃん。あなた、中々良い物を持って居るわね」
「涼宮さん?」

 男湯の方では漢の矜持がどうの、英雄の末路がこうのと言う、かなりシリアスな思考が展開して居る最中、女湯の方ではどうにも下世話で、あまり高尚とは言えない会話が展開して居る気配。
 具体的にはじゃぶじゃぶと言う水をかき分けるような音と、それに続く朝比奈さんの悲鳴のような声が……。
 ……と言うか、何をして居るんだ、あいつら。
 手桶の八分目まで入れたお湯を被りながら、視線は正面の鏡から、再びヒノキの壁に。その時、

「良いじゃないの、どうせ減るモンじゃなし」

 ……と言うハルヒの声。何となく、その一言によりハルヒが何をして居るのか大体の想像が付き……。長い洗い髪をタオルで纏めたハルヒが、温泉の中をいやらしい手つきで指をワシャワシャとさせながら朝比奈さんを追い掛け回している様子が手に取るよう
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