第6章 流されて異界
第147話 温泉にて
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少々の傷が着いたトコロで、見た目が大きく損なわれる訳でもない。それに、如何にも訳有り気な傷ならば、ぱっと見、歴戦の勇士に見えるかも知れないので、大きな問題もない……んじゃないかな。
そう考えながら、湯気で曇った鏡にお湯を掛ける俺。その向こう側の世界には、左右逆となった俺が、少々不景気な面をして此方を覗き込んでいた。
少し強い視線を放つ蒼紅ふたつの瞳。もしかすると多くの女性からさえも羨望の目で見つめられているかも知れない、自然にカールした長いまつ毛。現代日本人に多く見られる、線が細い……と言われる頬から顎に掛けてのライン。すっと通った日本人としては高い鼻と、かなり濃い眉。引き締まった口元。
かなり太くて見るからに硬そうな蒼の髪の毛は、現在、洗い終わった直後でたっぷりと水分を含み、普段よりもかなりボリュームダウンをした感じか。
所謂、くっきりとした顔立ち。凹凸がはっきりとしていて、各パーツが大きめ。これで背が低ければ妙に顔がデカいライオンのような印象を相手に与えるのでしょうが、幸いにして身長も平均的な日本人からすると高目なので違和感はない。日本人の特徴として好かれやすいのっぺりとした面長でしかも小顔や、サラサラヘアーとは一線を画した雰囲気か。こう言う部分で言うのなら、俺よりも自称リチャードくんや自称ランディくんの方が余程現代日本人に近い顔立ちをしている、と言えるだろう。
表情に関しては多少問題があるけど、何時も通りの……メガネを掛けて居なくとも問題のない俺の顔が存在している。
つまり、細部まではっきり見えている。そう言う事。
結局、あの夜に負った傷の回復に二晩費やす事となったが、それでも逆に考えると、完全に失くして終ったはずの両腕と光を、たった二晩で取り返す事が出来たと言う事なので……。
ここは素直に感謝すべきなのでしょうね。科学ではない術と言う世界に対して。
何にしても、何時までも石鹸まみれのタオルを握り締めて居ても始まらない。そう考えながら鼻歌混じりに身体を洗い始める俺。耳に馴染んだシャンソンのメロディに、日本語の歌詞。本来の狂おしいまでに情熱的な内容に比べ、その訳詩の内容は……如何にも日本的な内容の歌詞。
但し、原文が芸術的に優れている、などと俺は思わないが。何にしてもむき出しの感情を見せられて引くのは、見た目は若干、違和感はあるが、精神に関しては如何にも俺が日本人だと言う事の証なのでしょうが。
俺の意見を言わせて貰うのなら、たった一人。おそらく、生涯にただ一人の相手にだけ聞いて欲しい内容を、歌にして大勢に聞かせても……。
「それにしても涼宮さん、私たちの旅費も全部弓月さん持ちで良かったのですか?」
所詮は縦のモノを
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