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ロザリオとバンパイア〜Another story〜
第56話 一妻多夫
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っても許さない!!!」

 妖の本性、本能に従っているのは、モカだけじゃなく くるむも同じだったのだ。
 それはある意味、魂にまでも刻まれた種族としての本能。極自然な行為。……生きていく為に、長年培われてきた意志だ。

 バンパイアもそれは 例外ではないだろう。

 人の生き血を啜る事。それを妨害されれば――同じかもしれない。

「っておい! こら止まれ! くるむ!!」

 カイトは声を上げるが、血の昇った頭ではもう周りが見えていないのか全く耳を貸さず、モカのほうへ突進していった。

「だから… どうした? 許さないからこの私に牙をむくのか? 脆弱な自己中心的女が…」

 モカは、そんなくるむの叫びを訊いて、くすくすと笑いながらも眼を細めると、くるむを睨みつけた。それは、凄まじいまでの眼光。


「身の程を知れ」


 その眼を見て、言葉を訊いて……くるむの全身に悪寒が走る。


「うああああああああああ!!!」


 それでも、臆することなく爪を振りぬくが、今のモカには通じない。止まって見えるかの様なのだ。

「……ふん。のろい」

 モカは回避しくるむの尻尾を掴み上げた。

「二度と飛べぬよう、この翅と尻尾をむしり取ってやろうか」

 そのまま、尻尾を持って思い切り振りかぶる。

「や…やめーーー!」

 勢いのままに、くるむを地面に叩きつけた。
 ずどんっ! と言う凄まじい音が響く。
 
「きゃう!! か、はぁ……」

 その衝撃で地面に半径2メートルほどのクレーターが出来るほどの威力だ。
 そんな一撃を受けても、くるむが無事なのは、彼女も妖である為、と言う理由しかないだろう。

「攻撃が直線的過ぎる頭を冷やせよ。そこまで私が憎いのか?」

 モカは着地して、まだ倒れこんでいるくるむに近付いてゆく。
 何処か妖艶な笑みを浮かべて。

「小悪魔ぶってる割に純情な小娘だな…。 さて……、二度と私にたてつけぬ様にしてやろう。 ……まずは、宣告通り その尻尾と翅をむしってやるよ……」

 モカはゆっくりとくるむに近付いていく。圧倒的な実力差。今の自分じゃ100人掛りでも勝てない相手が、迫ってくる。

「う… うぁ…」

 くるむは立ち上がることが出来ず、その場で恐怖に震えていた。その圧倒的な妖力と、その眼をもうこれ以上見れなくなり、眼を閉じた。

 そして、モカが手を振り上げ、振り下ろしたその時だ。
 その振り上げた手は下ろされる事は無かった。

「だからまてって、モカも。ったく――2人して、オレの事無視して」

 モカの手を、カイトが握って止めていたのだ。

「え………?」

 くるむは、恐怖のあまり、眼を思わず閉じていた
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