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ロザリオとバンパイア〜Another story〜
第56話 一妻多夫
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にするには、つくねは勿論、今のモカも太刀打ち出来ない。つまり、封印の十字架(ロザリオ)を外して、力を解放させるしかないのだ。
 だが――外す事が出来なかった。


「あははは! ふんっ! 所詮は馬鹿力だけのバカ妖怪ね!つくねくんも足手まといみたいだし!2人ともおとなしく死んでーーー!」


 くるむの眼には、何をしているのか判らず、ただただ隙だらけだった為、その勢いのまま、突進していった。


「う、うわぁぁーーっっ!」
「きゃああっ!!」


 校舎の窓ガラスは粉々に割れ……、コンクリートにも亀裂が入る。 
 その威力を見た2人は、室内は危ない、と判断して 急いで外へと逃げたのだ。

 だが、何処にいても危険度は変わらない。
 くるむの鋭利な爪、そして 機動性のある翅は、決して2人を逃がさなかった。外に出る事は出来たが、その止むる事無い爪による斬撃は、学園の外に生えている大木を、まるでバターのように切り裂く。コンクリートを切り裂いた爪だからこそ、大木などは有って無い様なものなのだろう。


 そして――不幸な事に、慌てて逃げ出す時に、つくねは足を挫いてしまったのだ。


「つくね……っ!」

 モカは、咄嗟に動けないつくねを、ぎゅっと抱きしめた。

「モカさん何を…?」
「わたし…こんな時になってはっきり分かるよ」

 モカ自身もずっと、判っていた気持ちだった。
 それは、当たり前の感情。
 


『守りたい… 友達を失いたくない… だって…生まれてはじめて出来た友達だもん!』


 
 血が欲しいから、とか そういうのじゃない。
 バンパイアの本能よりも、もっともっと大切なもの。

「つくねは大切な友達なの! 血とか関係ないわ!! やるならわたしだけをやってーー」

 モカは、自分の命をもかけて、くるむに向き合った。

 《友達》 それも 初めての友達。

 人間の世界で、モカはずっと孤独だった。そんな自分に出来た本当にかけがえの無いもの。


 だが、激昂している今のくるむには何も伝わらなかった。

 ただただ、憎いモカを、その全てを壊す事しか考える事が出来なかったのだ。
 だからこそ――。

「笑わせるなーーー!」

 モカの言葉を綺麗事程度にしか考えられない。
 そのまま、勢いよく滑空して、モカとつくねを切り裂こうとした。

「(そんな… 元々はオレが惑わされたせいなのに…オレは…足手まといじゃ無い…)オレ、オレは……!!」

 守ってくれているモカを見て、つくねは強く思う。
 このまま、自分をかばう形で、モカが傷ついてしまったら、つくね自身も、自分を許せない。

「オレは、足手まといじゃないぞーーー!!」


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