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おぢばにおかえり
第三十二話 あちこち回ってその十八
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「それならいいけれど」
「まあ未成年ですから」
 阿波野君はまた私に明るく言います。
「外では飲まないですよ、まだね」
「だったらいいわ。それでね」
「はい」
「お団子もお茶も食べ終わったけれど」
 阿波野君が殆ど食べてしまいました。
「それで今度はどうするの?」
「何処に行くかですよね」
「ええ。どうするの?」
 阿波野君の顔を見ながら尋ねます。
「これから。お化け屋敷も吉原も奉行所も行ったし」
「じゃあ町に行きます?」
「そこも行ったじゃない」
 最初にです。いつも何かあれば人が集まるあの道です。左右にお店が並んでいる。
「もう最初の方に」
「あっそうでしたっけ」
「暴れん坊将軍とか必殺でいつも使っているあの道ね」
 とにかく色々な番組で撮影されている場所なのでもう完全に頭に入っています。撮影場所を覚えるなんてそれこそ映画村だけでしょうけれど。
「あそこも行ったわよ」
「じゃあ。今度は何処に」
 阿波野君も流石に考える顔になりました。
「そうですね。明治通りに行きます?」
「そこに?」
「長屋もお堀も行きましたし」
 何だかんだで二人で色々な場所を回っています。
「それだったらそこにでも」
「明治通りね。わかったわ」
 芝居小屋からすぐ側です。今私達がいるここから。
「じゃあ。行きましょう」
「そこでラーメンでも」
「ラーメンでもって」
 流石に今の言葉には呆れました。
「今食べたばかりじゃない。それでまだ食べるの?」
「甘いものは別腹ですから」
 いつもの能天気な声での返事でした。
「だから問題ないですよ」
「八本も食べたのに」
 私は二本です。この差は何なんでしょう。
「そんなのだから大きくなるのかしら」
「実は光合成もできますよ」
「それじゃあ人間じゃないじゃない」
 東映だからってそんな怪人みたいなことできる筈がありません。
「ふざけないの」
「まあ冗談ですけれどね」
「本気にする人いないわよ」
 流石に今のは。全く何処までもこんな感じです。それでもとにかく。
「明治通りって好きなのよね」
「そうなんですか」
「明治の雰囲気がね」
 あと大正とか戦前の昭和もですけれど。
「好きなのよ」
「レトロ趣味なんですね」
「服とかよくない?」
 レトロ趣味なのは自分でもわかていますから。そのうえであの時代の服のことも阿波野君に尋ねました。
「振袖に袴って」
「ああ、あれですね」
 阿波野君もあの服装は知っていました。
「はいからさんが通るの」
「その漫画を読んでから好きになったのよ」
 実はそうでした。映画では南野陽子さんがやっておられました。今でも凄く奇麗な人ですけれどその時は可愛いっていう感じもありました。
「明治とか大正が」

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