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おぢばにおかえり
第三十二話 あちこち回ってその十六
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「八条百貨店本店にもお店出しててね」
「へえ、それって凄いですよ」
「山月堂っていうの」
 これがその和菓子屋さんの名前です。
「そこの和菓子なのよ。洋菓子もやっててそれも貰うこと多いけれどね」
「ふうん、そうなんですか」
「それで百貨店の方から頂くの。山月堂さんも信者さんだし」
「それってかなり凄いですね」
「百貨店の偉いさんの娘さんもうちの教会にしょっちゅう来るし」
 本当にしょっちゅうです。子供の頃からよくうちの教会に来ています。お泊りしたこともお友達を連れて来てくれたこともしょっちゅうです。そうした娘さんです。
「その娘さんがまた山月堂の息子さんのお一人と婚約してるし」
「で、その縁で和菓子をですか」
「そういうことよ」
 全部ご縁での頂きものというわけです。
「それで和菓子がいつもあるのよ」
「そういうわけだったんですか」
「そう。お供えでね」
 お家にあるお菓子は全部それと言っても過言ではありません。
「親神様にお供えさせてもらってから食べてるのよ」
「けれどいつもお菓子が家にあるなんていいですね」
 阿波野君は親神様よりそっちに関心がいってるみたいです。ある程度予想できることですけれどこうまでストレートだと。何て言っていいかわかりません。
「食べ放題なんて」
「私達だって食べてるけれどね」
 そんな阿波野君に対して言いました。
「けれど家族だけで食べてるってことはないわよ」
「そうなんですか?」
「だって。お家に来られる方多いし」
 これはお家が教会だから当然です。信者の方々の他にも教会同士のお付き合いで来られたりします。お父さんやお母さんォ知り合いの方もよく来られます。
「それでね」
「そういう人にもお菓子ですね」
「当たり前でしょ。皆で食べないと美味しくないじゃない」
「確かに」
 阿波野君もこのことには同じみたいです。その明るい笑顔で頷いています。
「そうですよね。やっぱり皆で食べないと」
「そうでしょ?だから一杯あるけれど腐ったりはしないの」
「勿体ないことにはなっていないんですか」
「ええ。わかったかしら」
「はい。それにしても和菓子一杯ですか」
 今度は三色団子を食べています。お団子は茶団子とこの三色団子を頼んでいました。それにしても阿波野君は本当によく食べます。もう六本目です。
 私はまだ二本目で。やっと今その二本目の二個目を食べたところです。食べているのは茶団子です。
 阿波野君はその私が食べている様子を見ていました。そしてまた言ってきました。
「何か食べるの遅くないですか?」
「阿波野君が速過ぎるんじゃないの?」
「そうですかね」
 言いながらその六本目を食べ終えてしまいました。それで七本目に。
「最近幾ら食べても足らないんですよ」

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