第十八話 新幹線の中でその十六
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「死んで喜ばれるとかね」
「嫌われていてですね」
「そう、憎まれていたりね」
「それで早く死ねとか思われていて」
「実際に死んで喜ばれるとかね」
世の中こうした輩もいる。
「そうした死に方もね」
「よくないですね」
「そう、そうした死に方もね」
こちらもというのだ。
「よくないね」
「そうですね、そこまで嫌われたり憎まれていたら」
「生きている時点で辛いしね」
「嫌われていたらですね」
若しくは憎まれていたらだ。
「嫌になりますね」
「だから嫌われたり憎まれることはね」
「しないことですね」
「出来る限りね」
それがいいというのだ。
「やっぱりね」
「そうですよね」
「うん、そうしたことはしないで」
それでというのだ。
「普通に生きるべきだよ」
「それが自分の為でもあるんですね」
「嫌われていいことはないよ」
そして憎まれることもだ。
「生きているうちからね」
「それで死ぬ時もですね」
「そんな風に思われたらね」
死んで喜ばれる、そうしたものはというのだ。
「魂だけになってそういう場面見たら」
「嫌になりますね」
死んだその時にだ。
「だからですね」
「うん、人間やっぱりね」
「嫌われることもしないことですね」
「憎まれたりね」
「そういうことですね」
「嫌われ役、憎まれ役っているけれど」
それでもというのだ。
「出来る限りはだよ」
「そういうことはしないことですね」
「性格が悪いってことは自分にとって悪いことなんだ」
「それで嫌われて憎まれるから」
「そう、気をつけようね」
「僕だけじゃなくて」
「僕もだよ」
岡島は運転しつつ微笑んで言った。
「そうしたところは気をつけないとね」
「お互いにですね」
「人としてはね」
「気をつけることなんですね」
「そういうことだよ、じゃあね」
もう車は郊外に出ていた、そして。
その往来の人がすっかり少なくなった、家も車もそうなっている場所を進みながらだ。岡島は優花にあらためて言った。
「もうすぐだよ」
「はい、もうすぐですね」
「療養所だから」
「もう見えますか?」
「ああ、あそこだよ」
岡島は運転しつつ正面のまだ小さく見える白い建物を指差した、病院と洋館を合わせた様なそうした建物だった。
「あれがなんだよ」
「僕がこれから入る療養所ですね」
「そう、あそこがね」
「あそこに入ってですね」
「君は女の子になるんだ」
そうなるまでを過ごすというのだ。
「いいね」
「はい」
優花は岡島のその言葉に頷いた、車はそうした話をしている間にも療養所に近付いていた、優花の新しい生活がはじまろうとしていた。
第十八話 完
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