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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十九話 毒
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帝国暦 487年9月 30日 オーディン 宇宙艦隊司令部 ウルリッヒ・ケスラー
ヴァレンシュタイン元帥が新無憂宮から戻ってきた。早急に会って話がしたいと申し込むと応接室で待っていると返事が返ってきた。余計な事を考えるな、あの件について話さなければならない。
「元帥閣下、お忙しい所申し訳ありません」
「いえ、構いませんよ、宮中の用事もたいした事は有りませんでしたから」
「そうですか」
応接室に通されるとヴァレンシュタイン元帥は私に自らの前に座るように勧めた。目の前の元帥は穏やかな表情で微笑んでいる。大したものだ、冷静というか、沈着というか、一度慌てふためく姿を見てみたいものだ。一生の語り草になるかもしれない。
「閣下、キスリング准将に聞きました。よろしいのですか?」
「ギュンターから聞いたのですか……。よろしい、と言うのはローエングラム伯ですか、それともオーベルシュタイン准将?」
「両方です」
私の言葉に元帥は少し困ったような表情を見せた。
「ケスラー提督はローエングラム伯を排除しろと言っているのですか?」
「排除しろとは言いませんが、実権の無い役職には就けられませんか?」
元帥は少し小首をかしげ考えるようなそぶりを見せた後、口を開いた。
「……難しいですね、伯には失態が無い。先日の戦いで上級大将に昇進したばかりです。この状況で伯に相応しい実権の無い役職、そんなものが有るとは思えません」
「……」
「無理に排除すれば、私と伯の関係が良くないと公表するようなものです」
確かにそうなのだ。周囲から見れば、今現在でも微妙な関係にあるように見えるだろう。
元帥がローエングラム伯に含むところ無く接するから亀裂が表面化せずにいる。しかし副司令長官から移せばそうは行かない。亀裂は表面化し、それに伴い、伯を利用しようとする人間が増えるだろう。
「しかし、今のままでは元帥閣下が危険です」
「危険なのはオーベルシュタイン准将でしょう」
「オーベルシュタインですか」
私の言葉に元帥は頷いた。
「確かに彼は危険な所がありますが……」
「彼を知っているのですか」
元帥の言葉に思わず苦笑が漏れた。元帥が知らないはずが無い。あれほどまでに完璧な人材登用をしたのだ。登用した人材の士官学校時代の同期生など最初に調べたろう。
「士官学校で同期でした」
「なるほど、どのような生徒でした」
「どのような、ですか……」
優秀な男だった、だが他者と打ち解ける事は無く、いつも一人で孤立していた。そして立てる策は有効だったが、何処か他者からは受け入れづらい暗さがあった、それが孤立の原因だったかもしれない。あれはどういう男だったのか……。
元帥にそのことを話すと身じろぎもせず黙っ
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