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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十九話 毒
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か。ヴァレンシュタイン元帥も当初はそれで良いと考えていた。だからローエングラム伯を担ごうとし、そのために様々な準備をした。私もその一つだ。今の宇宙艦隊の人材は殆どそのために用意したのだろう。

しかし、ローエングラム伯との関係が上手く行かなかった。伯は元帥を使いこなせず、結局元帥は独自の道を歩き始めざるを得なかった。元帥が用意した人材はローエングラム伯のためではなく元帥自身のために用いられる事になった。

そして元帥にとっては帝国の政治を変えることが目的でゴールデンバウム王朝自体にはそれほど関心が無かった。その事が王朝の存続を認める方向で動いている、そういうことだ。ローエングラム伯とオーベルシュタインはそれを阻もうとしている。

つまり帝国軍には二つの流れが有るということになる。ゴールデンバウム王朝を許容する流れと否定する流れ。それがせめぎあおうとしている。

皮肉な事だ。元帥がゴールデンバウム王朝に対して関心が無い事が、王朝の存在を許容した。元帥が平民であるから王朝を許容できたという事だ。全く皮肉だ、ルドルフ大帝が知ったらどう思うだろう。

彼が侮蔑したであろう平民が彼の子孫を受け入れ、彼が帝国の藩屏として設立した貴族がそれを拒絶している。血統、遺伝子を盲信したルドルフ大帝にとって、これほどの復讐は無いだろう。

私の思考を遮るかのように声が響いた。
「先程の質問に答えましょう。オーベルシュタイン准将の持つ毒。それは呪いです。全てを否定し、全てを滅ぼそうとする呪い。彼は危険すぎるんです……」
ヴァレンシュタイン元帥はそう言うと何かに耐えるかのように静かに眼を閉じた……。





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