巻ノ五十一 豚鍋その三
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「それも昔からな」
「あちらでもですな」
「豚を食うのですな」
「今の我等の様に」
「そうしていますか」
「そうじゃな、あと羊も食うという」
幸村はこの生きもののことも話した。
「明でも異朝でもな」
「羊、ですか」
「干支にある」
「本朝には殆どいませんが」
「あの生きものもですな」
「美という字はな」
この字のこともだ、幸村は話した。豚肉を食いつつ。
「羊からきておる」
「確かに、美という字にです」
「羊が確かにありますな」
「羊の下に大きい」
「それが美ですな」
「味が後に来る、美味いというのは羊の味からじゃ」
そこからというのだ。
「きておる字なのじゃ」
「左様でしたか」
「羊は明るいにあったのですな」
「そうなのですな」
「まさに」
「うむ、思うにな」
それこそともだ、幸村はまた言った。
「本朝は小さいのう」
「異国では、ですな」
「色々なものを食しておるのですな」
「豚なり羊なり」
「そうしたものを」
「そうじゃ、機会があれば異国にも行ってみたい」
日本の外の国にというのだ。
「まあ機会があればだがのう」
「外は一体どんな国々なのか」
「ご覧になられたい」
「殿はそこまでお考えですか」
「ははは、あくまで機会があればでじゃ」
幸村は自身に目を向ける十勇士達に笑って返した。
「そうしたな」
「ではその時は」
「我等もです」
「共に大海原を越えてです」
「異国を巡らせて頂きます」
「うむ、我等は常に共におる」
このこともだ、幸村は応えた。
「ならばな」
「本朝の外でもですな」
「明も天竺も南蛮も」
「そういった国々も」
「共に行こうぞ、よいな」
主従でというのだ、こう話しながらだった。
幸村達は豚鍋も食った、鍋は実に美味く相当な量の肉も野菜も全て食ってしまった。そして食った後でだった。
勘定を払い店を出た、そしてその肉のことを話すのだった。
「骨に付いている肉がよかったな」
「うむ、あの部分が特にな」
「味わいがあったわ」
「脂のところも美味かったわ」
「いや、堪能したわ」
「全くじゃ」
「食い方も猪と似ておるが」
幸村がここでまた言う。
「しかしな」
「それでもですな」
「やはり猪より食いやすいですな」
「よい味でした」
「実に」
「全くじゃ、よい味じゃった」
満足している顔でだ、幸村はこうも言った。
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