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魔女に乾杯!
31部分:第三十話
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第三十話

                第三十話   もてる条件
 ライゾウは猫としてはかなり男前である。スコッティ=ホールド特有の垂れた耳がチャームポイントであり、顔立ちもいい。従って雌猫達からの評判もいい。
「この前のデートでさ」
 よくタロにそんな自慢話をしている。
「夕焼けを見たんだぜ」
「そうなのか」
「次の日は別の娘とな。川を見に行ったんだ」
「相変わらずもててるみたいだな」
「まあね。旦那はどうなんだい?」
「僕かい?」
「そうさ。旦那ももてるんだろう?」
 タロも男前の犬である。顔は風格があり、黒い毛がよく似合っている。しかもそれはやや虎毛でありそれが一層彼の風格を際立たせている。もてないとはとても思えなかった。
「僕はそれ程じゃないよ」
 しかし彼はそれを否定した。
「嘘だろ、この前可愛い娘とお話してたじゃないか」
「可愛い娘と?」
「そうさ、ハスキーの」
 ライゾウは言った。
「青と緑の二色の目の女の子と。美奈子と一緒に散歩に行った時に話していたの知ってるんだぜ」
「よく見てるんだな」
「当たり前さ、壁に耳あり障子に目あり」
 彼は胸を張ってそう答えた。
「おいらにわからないことはないさ」
「そうかねえ」
 だがタロはそれには冷淡であった。
「何だよ、違うとでもいうのかよ」
「御前とは結構長い付き合いだよな」
「ああ」
「お互い子犬と子猫の時にこっちにやって来て。かれこれ二年か」
「もうそんなになるのか」
「その間僕が女の子と付き合ったのを見たことがあるかい?話をした以外に」
「あるじゃないか」
 だがライゾウはそう答えた。
「そのハスキーの娘もそうだし」
「あれは相談受けてたんだよ」
「相談?」
「ああ、彼氏のことでね。どうも上手くいってないみたいだったから」
「そうだったんか」
「それでね、相談に乗ってあげたんだ。仲直りしたみたいだよ」
「それはよかった」
「そうした相談を受けるけれどね。付き合ったことはないよ」
「またまたあ」
「いや、本当に。君とは違うさ」
「また朴念仁だな」
「何となくね、わずらわしいだけさ」
 彼はそう述べた。
「女の子と付き合うのがね。それより一人でいる方が気が楽さ」
「そういうもんかね」
「僕はね、そうさ。だからこれからも女の子とは付き合うつもりもないよ」
「そういうことか」
「ああ」
 だがライゾウは話を聞きながら思った。どうやらタロは他の雌犬達から色々と相談を受けているらしい。嫌いな相手に相談を持ちかけるのはいない。それを考えるとタロももてるのではないかと。
 しかしそれは言わなかった。タロに言ったところで気付くとも思えない。ここは黙っておくことにした。それは友人への気遣いであった。


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