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渡り鳥が忘れた、古巣
渡り鳥が忘れた、古巣【A】
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っていた。元旦0時、小林泰弘・中村直子と署名捺印して、婚姻届を提出した。直子は「嬉しい。今日からナオは、ヤッチャンの奥さんね」と、言った。泰弘は優しく頷いた。二人は、古民家の近くの神社に向かった。神社は、初詣の人で賑わっていた。二人は賽銭を入れ合掌した。直子は「ヤッチャン、何を、お願いしたの?」と、聞いた。「安藤家全員の健康と、俺の就職。ナオは?」と、泰弘は言った。「ナオも同じ。もう一つ。ヤッチャンの子供が、早く、出来ますように」と、直子は答えた。二人は、おみくじを引いた。二人とも、大吉だった。二人は笑って喜んだ。古民家に戻り、二人は、栄吉夫婦とヨネに、初詣に行って来た事を話し、おみくじを見せた。栄吉夫婦とヨネは、それを、微笑みながら、見ていた。
官庁の御用始めの日、市役所の戸籍課から、泰弘の元に[婚姻届に、不備が有るので、市役所に、来る様に]との、電話が入った。翌五日に、泰弘と直子は、戸籍課に赴いた(おもむいた)。戸籍課の説明の依ると[直子は安藤家に来た時点に、養子として入籍されていて、中村直子から、安藤直子に移っている]との事だった。直子は、その事実を全く知らなかった。[氏名・住所・戸籍などを訂正すれば、婚姻届は、提出日の日時(元旦0時)で受理出来る]との、内容だった。二人は、婚姻届を訂正して、提出した。二人とも驚いていた。帰りしな、直子が「ナオは、ヤッチャンの、お嫁さんに成りたい、大丈夫?」と、心配そうに言った。「大丈夫。三月には、就職の内定を貰える(はず)なので、その時、母と栄吉さんとキクさんに、結婚の報告をしよう」と、泰弘が答えた。
二月の始めの夜、直子が、神妙な面持ちで、泰弘の部屋に入って来た。「話が有るの」と、直子が言った。「何?」と、泰弘が聞き返した。「わたし、赤ちゃんが出来たの」と、直子が言った。泰弘は、目を丸くして、一瞬、言葉が出なかった。「今日、病院に行って、婦人科に診て貰ったら、妊娠三か月だって」と、直子が言った。泰弘は、あたふたした顔、「俺も、父親か」と、言った。漸く(ようやく)笑顔で、泰弘は「ナオ、有難う。お腹の赤ちゃん、大丈夫?」と、言った。「大丈夫」と、直子は、微笑みながら静かに答えた。「大学のゼミの教授が[君は、優秀だから、来月には必ず就職の内定が貰える。大丈夫だ]と、言ってくれた。来月、母と栄吉さんとキクさんに「結婚した事と、子供が出来た事と、就職の内定を、同時に報告しよう」と、泰弘は言った。直子は、嬉しそうに頷いた。その夜、泰弘は、気が動転して、眠れなかった。
国立大学一期校に在学中で、語学が担当で、成績も優秀な泰弘は、三月に、期待していた通り、早々と、志望していた東証一部上場の、大手商事会社の内々定を、貰えた。夕食を終えた、その日、栄吉夫婦とヨネは居間で寛いていた(くつろていた)。泰弘は三人に「報告が、有るのだ
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