渡り鳥が忘れた、古巣【A】
[6/19]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
に出勤して居なかった。直子が、台所に戻って行った。泰弘は、記憶を辿りながら[焼肉屋の支払いは?]自分の財布を見た。映画館の入場料を差し引いた金額が、手づけず残っていた。慌てて台所に行き、直子に「焼肉屋の支払いは?」と、聞くと「私が払った」と、直子が笑いながら答えた。尽かさず泰弘が「いくら?」と、聞くと、直子は「忘れた」と、答えた。続け様に泰弘は「家までは、何で帰った?」と、聞くと「タクシーで」と、直子は答えた。「いくら?」と、泰弘が聞くと、又しても直子は「憶えていない、忘れた」と、笑顔で答え、立替分を、全く請求しなかった。泰弘は、電話局の番号案内に問い合わせ、焼肉屋の電話番号を調べた。焼肉屋に電話したら「今は、店長が出社して居ないので、分からないです。再度、夕方に電話して下さい」の、返事だった。合わせて焼肉屋で、何時も、迎車で使っているタクシー会社を、聞いたら「曙タクシーとツバメ交通の二社ですが、多分、ツバメ交通の方が多く使っているので、ツバメ交通だと思います」と、答えた。ツバメ交通に、昨夜の時間帯と出発地と到着地を言ったら、該当する車が、判明し、運賃を教えて貰った。夕方、再度、焼肉屋に電話したら、予め(あらかじめ)、昼間の従業員から、内容を聞いて居たらしく、店長から即座に、昨夜の飲食代を、教えて貰った。「大丈夫だったですか?」と、店長が気遣ってくれた。泰弘は、昨夜、店に迷惑を掛けた事を、詫びた。電話を終えた泰弘は、飲食代とタクシー代に少し上乗せして、直子に返そうとしたら、直子は、実費しか、受け取らなかった。夕方の七時頃、栄吉夫婦とヨネが帰宅した。泰弘は、居間で三人に、昨夜の失態を謝った。さながら居間は、安藤家のミニ法廷に成った。そこには、猫達も同席した。栄吉は「大人に成ったら、大人の責任が或る。酒も、自分の責任が持てる範囲で飲め」と、戒め(いましめ)られた。直子が「ヤッチャンは、私の事を思って、してくれた事なの。私も悪いの。ヤッチャンばかり叱らないで」と、涙声で言った。弁護士は直子だけだった。泰弘は、罰が悪そうに、頭を掻いていた。その日から、泰弘は定期入れに、直子の写真を入れた。
三年生の夏、大学は夏休で、授業は無く、泰弘は自宅に居た。茅葺の古民家は、冬には暖かく、夏には涼しかった。泰弘には、進学塾のアルバイトが有るので、大学の友達の様に、長期の旅行は、不可能だった。夏休は、進学塾の生徒達には、過密スケジュールが、組まれていた。直子が、居間に有った書物を持って、泰弘の部屋に入って来た。夏休で寝坊をして、未だ、泰弘の布団は、敷いて有った。「ヤッチャン、これ何て読むの?教えて」と、言って、書物を開いた。直子の右腕が、泰弘の左腕に触れた。彼女は白のノースリーブで、下着が透けて見えた。暫くして泰弘の手が、直子の胸を掴んだ。直子は少し驚いたが、「恥ずかしい、ナオで
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ