渡り鳥が忘れた、古巣【A】
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小学校以来だよ」と、嬉しそうな顔で言った。直子の笑顔を見て、泰弘も嬉しかった。「腹、減った。何が食べたい?」と、泰弘が言った。「何でも、ヤッチャンが決めて、私、分からない」と、直子が答えた。泰弘は「そうだ、焼肉が良い、俺、今年から二十歳で大人に成ったから、酒が飲める、そうだ、そうだ」と、言って、二人は焼肉屋に向かった。雨が降ってきた。直子は、トートバックの中から、折りたたみ傘を取り出した。傘を開くと「俺が持つよ」と、泰弘が言った。二人は、歩き始めた。暫く歩くと直子は、泰弘の開いた傘の下は自分だけで、泰弘は濡れている事に気付いた。直子は泰弘の優しさを感じた。「ヤッチャン、濡れているよ。傘の下に入って」と言って、泰弘を引き寄せた。肩と肩を寄せ合った、初めての相合傘だった。焼肉店に着いた。直子は、外食するのが、初めてだった。メニューを見て、直子は驚いた。「ヤッチャン、ここ高いよ、帰って家で食事を仕様」と、言った。「大丈夫、今は金持ちだから」と、言って、泰弘は財布を見せた。直子に取って、牛肉など高級品で、口にした事は無かった。直子は、躊躇しながら食べ始めた。凄く、美味しかった。泰弘は、ジョッキでビールを飲み、未成年で十七歳の直子は、ジュースを飲んだ。未だ、自分の適量を知らない泰弘は、ジョッキ三杯で酔い潰れた。直子は、途方に暮れた。幸い直子の財布には、三万円が入っていた。会計を済ませ、焼肉店の従業員の手を借り、泰弘をタクシーに担ぎ込んだ。途中、戻しそうになり、数回タクシーを停め、車外で戻した。自宅の古民家に着き、運賃を払い、門から玄関までは、遠いので、運転手に頼み、二人で泰弘を、玄関に運び込んだ。栄吉夫婦とヨネは、帰りの遅い泰弘と直子を心配して、居間で待っていた。酔い潰れた泰弘を見て三人は、ビックリいた。皆で、泰弘を寝室に運び込み、寝かし付けた。散々な、泰弘と直子の、初デートだった。
翌日、二日酔いで、泰弘が起きたのは昼を回っていた。頭痛と吐き気が、続いていた。直子が、水をグラスに入れて、部屋に入って来た。「ヤッチャン、大丈夫?」と、直子が言った。「昨日は御免ね、今、何時?」と、泰弘が言った。「午後一時よ」直子が答えた。泰弘は、目覚まし時計を見ながら「やばい、塾に電話しないと」と、言って、部屋を出て、台所の電話で「すいません、体調が優れないので、今日の授業を、休ませて下さい、すいまさせん、すいまさせん、明日の授業は必ず出ます」と、言って謝っていた。自分の部屋に戻ったら、直子が、泰弘の布団を押入れに、仕舞っている処だった。グラスの水を飲み「御免ね、昨晩の事、全然覚えていないよ」と、泰弘は言った。「大丈夫、映画、楽しかった。焼肉も美味しかった。ヤッチャン有難う、でもヤッチャン、重いね」と、直子が笑いながら言った。既に、栄吉夫婦とヨネは、縫製工場
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