渡り鳥が忘れた、古巣【A】
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うみしんしん)だったが、親鶏に蹴散らかされ、タジタジだった。食卓には毎日、新鮮な生卵が載る様になった。直子の料理は、ヘルシーで安藤家の皆が、満足だった。ある日、泰弘は直子を、食事に誘った。待ち合わせ場所は、市内の私鉄の駅前で、約束時間は午後の3時だった。直子は、栄吉夫婦とヨネの夕食を用意し、食卓テーブルに[ヤッチャンに食事に誘われたから、行ってきます。ヨネさんのローヒール、お借りします]と書置きして、出掛けた。駅前で待っていたら「ナオ、待たせて御免」と、言って、泰弘が、改札口から出て来た。直子は何時もの様に、髪は、一本結いのオサゲで、衣服は、泰弘がクリスマスにプレセントしたワンピース、靴は、ヨネの流行遅れのローヒール、手には、縫製工場の傷物のトートバックを持っていた。「ナオ、超可愛い!食事には、未だ時間が有るから、映画でも観ようか?」と、泰弘は言った。「ヤッチャン、これってデート?」と、直子が聞いた。泰弘は頷き「嫌か?」と返した。直子は、恥じらいながら、首を横に振った。歩道で泰弘は、高校時代の二人の女友達から、声を掛けられた。女友達は、ピエロの様なケバイ厚化粧で、頭は金髪に染め、不似合な衣装を纏い(まとい)、手にはブランドのバックを持っていた。高校時代からイケメンで成績優秀な泰弘は、女友達から人気が有った。女友達は「泰弘、久しぶり、その娘、彼女?」と、呼び付で言った。「オウ、久しぶり、この娘、俺の彼女、可愛いだろう」と、泰弘は答えた。女友達は直子を、品定めするかにように、足元から頭まで、ジロジロと見詰めていた。「趣味、悪い、泰弘、又ね」と、言い残し、ケバイ女友達は去って行った。「ごめんね、ヤッチャン」と、直子は謝った。「気にするな、あんな馬鹿女」と、言い、泰弘は直子と、手を繋いで、歩き始めた。「人が、見ているよ」と、恥じらいながら直子は言った。「大丈夫」と、言って泰弘は、手を繋いだまま、歩き続けた。映画館に着いた。ディズニーの、ピノキオが上映されていた。「入場料、高いよ、大丈夫」と、直子が言った。「心配するな、今日、アルバイト先で、給料を貰ったばかりだ、今は俺、金持ちだ」と、泰弘は答えた。アクションシーンで直子は目を閉じ、泰弘の手の甲を、握り締めた。お爺さんが、ピノキオに唄い始めた。悲しいシーンになると、直子の目には、涙が毀れていた。泰弘は、直子の胸の膨らみを、見ていた。直子は泰弘の視線に気付かなかった。泰弘は、視線を正面に、向き直した。何を考えているのだ。このスケベ野郎、と思い、泰弘は両手で自分の頭を叩いた。「どうしたの?頭痛?」と、直子は聞いた。「何でもない」と、泰弘は惚けた(とぼけた)。直子には、優しさと、癒しと、恥じらいの、女性の要素が、全て備わっていると、泰弘は感じていた。映画館を出て直子は「楽しかった、映画館に行って、映画を観るのは、
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