渡り鳥が忘れた、古巣【A】
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そうに言った。手を繋いだ二人から、満面の笑みが毀れていた。安藤家・全員が口々に「おめでとう」を連発した。翌々日、同好会の仲間達と彼等の親達が、安藤家に集まり、細やかな結婚式を催した。費用は、全員のカンパ金で賄った。市内の貸衣装店で、タキシードと白いワンピースを借り、小さなウエディングケーキを用意した。結婚指輪だけは、急ぎ博史が、自前で買った。由実子の頭には、直弘と同好会の仲間達が昨夜、白い和紙で作った、七羽の折鶴のリングが、のっていた。直弘が、栄吉の遺品の紋付き袴を着て、即興の神主に成った。二人は小皿で三々九度を交わし、直弘が、庭から切り出した榊で御払いをして、二人の門出を祝った。楽器を持ち寄った同好会の仲間達が、曲を奏で、直子が唄った。サプライの結婚式だったが、そこには皆の絆が有った。感激の余り、博史と由実子の二人は、泣き出してしまった。直子は、腕の刺し傷の跡を、見ていた。直子には、傘の傷跡は、?(ハート)の様に見えた。
市議会選挙が終わって、一年が過ぎていた。安藤家に、市役所の職員と、民間の水道工事会社の人間が来た。道路を掘り起こして水道管を敷設するそうだ。市役所の職員は、水道課や建設課や都市計画課・・・など、関連する部署から、複数の職員が、各々の部署の車で来た。市の職員の人数は総勢八名に比べ、民間の水道工事会社の人間は一人だった。「市が、水道管を敷設するので、これからは、市の上水道を使って下さい。敷地内の工事費は、若干、市で負担しますが、残額は全て、住民の負担に成ります」と、市の職員が話した。直子が「住民は、各々、井戸を掘って有るので、水は間に合っています。それに、井戸は、水道料金は掛っていません」と言ったら、市の職員が「市の条例ですから、従って下さい。従わないと、条例違反に成ります」と、命令口調で言った。水道管の敷設は終了し、道路は元通り修復された。暫くして、再度、道路を掘り起こして、下水の土管を埋める工事が始まった。その工事が終わって間も無く、今度は、都市ガスの工事が始まった。下水と都市ガスの事前説明も、市の職員の大人数と、民間業者の少人数は、人数差が在った。三度に亘る、道路の掘り起しは、縦割り行政の弊害と、税金の無駄遣いだった。古民家の水道は、ポンプ付きの井戸水で、下水は、バクテリアの地面吸い込み式で、上下水道とも、支障をきたしては、おらず、ガスは、博史の家業の、プロパンガスを利用していた。安藤家は、そのインフラの利用を、全て無視し続けた。後日、市の水道課の職員が二人で、インフラを利用する様に、説得に来たが、直子は取り合わなかった。市の職員の再三の訪問に、業を煮やした直子と直弘は、例の成金議員宅に出向き陳情した。丁度、成金議員がトタクターに乗って、畑から帰ってきた。市会議員の登庁日数は、一般職員に比べ三分の一以下で、登庁時間も、議会が開いている
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