渡り鳥が忘れた、古巣【A】
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子はイエローを撫でた。「今日、学校に行った時、担任の教師から、由実子のアルバイトは、弱年労働に当るから、辞める様に注意された。由実子は、少しでも家計を助けようと、している事です」と、母親が話した。直子は、中学校の教師で有りながら、学習塾のアルバイトで稼いでいる担任教師に、矛盾を感じた。キクとヨネは、納戸から縫製工場時代に作った衣服と、修学旅行の小遣い銭を、由実子に渡し、直子は自園野菜を渡した。母親は、涙を浮かべ「助かります。本当に、有難うございます」と言って、二人は帰路に付いた。
修学旅行を終え、少年達が安藤家に集まった。中に由実子も居た。直弘の土産は八つ橋だった。少年達の土産は、各自、色々だったが、由実子の土産は、舞子の刺繍が施してある小銭入れで、キクとヨネと直子の三人に渡した。ヨネが「やはり、女の子の土産は、見立てが違う」と、言って誉めていた。金閣寺や清水寺、奈良の大仏や大阪城などの、関西の名所の大半が載っている絵葉書を、三人に見せた。三人は、未だ、関西には一度も行った事が無く、少年達の説明を聞きながら、食入る様に見ていた。
少年達は集合写真も、見せてくれた。全ての集合写真に、紅一点、由実子が中心に写
っていた。写真の中に、旅館での枕投げや、担任の教師が、幾重もの生徒の下敷きに成り、モガイテいる、無礼講の写真も有った。下敷きになった、担任教師の苦痛に満ちた顔は、常日頃の、生徒の怨念が込められている様に見えた。
月日が流れ、今日は、直弘達の卒業式だった。例の如く、東南アジア統括責任者の企業戦士・泰弘は、多忙に付き帰国は、出来なかった。その日、泰弘から国際電話が有った。電話に泰弘が出た。「直弘、おめでとう」と、泰弘が言った。「ありがとう」と、直弘が一言だけで返した。味気ない、父と息子の電話の会話だった。直子に換わった。「ナオ、ごめんね」と、泰弘が言った。「ヤッチャン、大丈夫。こちらは皆、元気だから」と、直子は嬉しそうに答えた。電話の会話は30分以上続いた。最後に「仕事頑張ってね。体、気を付けて」と言って、直子は電話を切った。その夜、少年達・保護者・由実子・由実子の母親が、安藤家に集まった。直弘と少年達と由実子は、各々、手に楽器を携えていた。楽器を持って現れた子供達を見て、安藤家の三人はビックリした。直弘と少年達が各々、第二ボタンを直子に渡した。直子は、突然の出来事に、まごついた。直子は「ありがとう」を連発した。演奏が始まった。彼らは、安藤家の居間で、音楽を聴いてから、吹奏楽部に入り、今日の為に密かに練習した。曲目は全て、70年代前のポップスや、クラシックだった。直子とキクとヨネは、又しても驚いた。少年達が、保護者に踊る様に促した。保護者は夫婦で踊り始めた。次に保護者達の父親が、キクとヨネと由実子の母親と、踊った。直子にも、保護者達の父親が踊りに、誘っ
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