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渡り鳥が忘れた、古巣
渡り鳥が忘れた、古巣【A】
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った。直弘が突然「俺、一週間、学校休むよ」と、言った。直子が「どうして」と聞くと、「俺、修学旅行の金、払って無いから」と、直弘は言った。直子の節約志向は、我が家に余裕が無いからだと考え、直弘は、直子に、修学旅行の積立金の話を、一切しなかった。直子は、慌てて学校に行き、修学旅行の費用を、払い込みした。教頭から「他にも、行かない女子生徒が、同級生で一人いる」と聞かされた。生徒は、母子家庭だった。直子は、その生徒の旅費も、支払った。帰路、自分も中学時代に、修学旅行に行けなかった事を、思い出していた。自宅に戻り直弘に「ごめんね」と言い[二人の旅費の払い込みを済ました]と報告した。直子は、又しても、自分の節約志向の失態だと反省した。「有難う」と、直弘は言い、女子生徒が正月に、お年玉を500円しか貰っていない事も、話した。「担任の先生は嫌いだ。学校に内緒で、学習塾のアルバイトをしている。授業が終わると、出来ない生徒の補習もしないで、直ぐに帰ってしまう。部活の先生は好きだ。授業が終わっても、遅くまで俺達を指導してくれる」と、付け加えた。直子は、同時に[落ちこぼれを無くすも、教育の役目では]と考えた。「部活は何の部活?」と、直子が問うと「秘密、秘密、後で分かるよ」と、直弘は言葉を濁した。翌日の夕方、女子生徒が母親と一緒に安藤家に来た。女子生徒のセーラー服は、色があせていて、母親の衣服とも貧祖だった。「今日、担任の教師から、呼び出しが有って、御宅様が、娘の修学旅行の費用を、払ってくれた事を、聞かされました。見ず知らずの他人様に、娘の旅費を払って貰う事は、出来ません。明日、学校に行き、旅費を戻して貰って下さい。私には、寝たきりの老いた母親もいます。治療費も掛かりますし、余裕が無い事は、娘も解っています。娘も端から、修学旅行は諦めています」と女子生徒の母親は、言った。「私も、修学旅行には行けませんでした。娘さんも修学旅行には行きたいでしょう?」と直子は、女子生徒に聞いた。女子生徒は、首を横に振った。隣に座っていた直弘が「うそだ!由実子!俺達と一緒に行こうよ!」と、言った。再度、直子が「由実子ちゃんと、云うの?修学旅行に、行きたいでしょう?」と聞いた。由実子は俯きながら小声で「本当は行きたい」と、涙を一杯溜め言った。母親は、由実子を抱き締め、泣きながら「ごめんね」と、言った。安藤家全員が、貰い泣きをした。「借りたお金は、毎月、少しずつ、お返しします」と母親が言うと、直子は首を横に振り「由実子ちゃんが、大人に成ったら、修学旅行に行けない生徒に、返して下さい。上を見て下さい。貴方より頑張っている人がいます。下を見て下さい。貴方より恵まれない人がいます。両方を見る事が出来る人が人間です」と、栄吉から教わった言葉、を引用して言った。猫のイエローが由実子の膝に乗った。「可愛い」と言って、由実
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