第23話『正々堂々』
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の今の一瞬でようやく割り切った。
──風と、走る。
『ドン!』
その合図と共に、俺は一歩を踏み出した。
迷いなんてない、無我夢中の一歩を。
「うぉぉぉ!!」
俺は全速力で駆け出した。
そして魔術を使った。追い風になるように。
俺だけでなく、周りのレーンも含め。
「うわっ!?」
「ちょ、やべぇ!」
隣からは焦ったのか、慌てた声が聞こえた。
ルールは“追い風の中、100mを走り切る”。
ハンデなんか一切無く、全員が同じルールで戦う。
ただ、俺が風に慣れてるってだけで。
「良いぞ、晴登!」
大地の声が聞こえた。
走る4人の中で、唯一風に乗って走っている俺。
ゴールまではもう少しだった。
最初は俺のレーンだけに魔術を使って、俺だけが速くなるようにしようと考えていた。
でもそれは正々堂々では無いのではないか。
そして最終的に俺の中で導かれた答えは『全員同じ条件下で戦う』ということだった。
「あと少し…」
とはいえ、一応全力では走っている。
そのため、魔術の使用を合わせると体力の浪費が激しい。
あれ、じゃあ暁君ってまさか・・・?
あの不自然な太陽の輝き。暁君の魔術の属性は光を持つ。そして走りながら魔術を使ったとしたら・・・体力が・・・。
「なんだ…」
物事を大きく考え過ぎていたようだ。
彼はきっと疲れただけなのだ。熱中症ですらもなかった。
多分、休めば治る。良かった…。
「晴登、気ぃ抜くなよ!!」
その大地の声が俺を現実に引き戻した。
危ない危ない、俺はまだ競技の途中だったんだ。
よそ見してちゃダメだよな!
「よっしゃ!」
ラストスパートを始める俺。
風に乗り、比較的楽に走ってきたので、体力はまだ有るには有る。あと少し!!
「うぉぉぉぉ!!」
叫びといえるほどの大声を上げながら駆ける俺。
そしてそのままの勢いでゴールテープを切った。
「どうだ…」
後ろを振り向くと、残りの3人がゴールするところだった。
その様子を眺めていると、横から声が掛かった。
「やったな晴登!!」
「あぁ!」
満面の笑みを浮かべ、右手を上げた大地。
その意図を察した俺は、返事をしつつ右手を上げ・・・
パシッ!
周りに響き渡るほどの、大きいハイタッチをした。
*
「暁君!」
保健室の扉を開け、中に駆け込む俺。
なぜここまで急いでいるかと言うと、今さっき保健室に搬送された暁君の容態が気になったからだ。
「よ、三浦。徒競走ど
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