暁 〜小説投稿サイト〜
非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第23話『正々堂々』
[4/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話



汗を垂れ流し、ゴールへと向かう暁君。いつの間にか3人を抜き、トップに立っていた。


「「「いけー!!」」」


1組…いや、赤団全員の応援が重なった。
その声に背中を押されたのか、暁君は流れるようにゴールした。

俺たちだけが知っている暁君の運動能力。
それを乗り越えた彼を見て、驚くしかなかった。


『1位は赤団です』


「「っしゃぁー!!」」


もはやお祭り騒ぎと言えるほどの喜びが、1組に生まれた。
他から見れば「喜び過ぎではないか?」と思われるだろうが、そんなのお構いなしに俺らは喜ぶ。


だが暁君が俺らの所に戻ってくることはなく、彼はゴールしてから数歩歩いた所で倒れていた。


「暁君!」


その容態にいち早く気付いた俺は、すぐさま彼に駆け寄る。
彼は異常なほどの汗を垂れ流し、苦しそうにしている。
その後の俺の問いかけにも反応せず、ただ荒い呼吸を続けるだけだった。


あまりの非常事態に、騒がしかった人たちはピタリと静まる。誰もが担架で運ばれていく彼を見ていた。

今日は暑いから、それで熱中症になったのかもしれない。俺はそう考えることにした。
ひどい病気だとか、そんなのではないはずだ。
きっと・・・大丈夫・・・。





『競技を再開します』


暁君を運び終えたのか、アナウンスはそう言った。
仕方ない。心配だが、暁君のことは一旦頭から離そう。彼はただの熱中症、休めば治る。
クヨクヨ考えるより、彼が勝ち取った1位を大事にしなければならない。

でも・・・男子の最終走者ってのは緊張するな…。






でもその時はすぐに訪れた。


『次は、男子最後の組です』


それを聞いて、俺の心臓は拍数を上げていく。
やべぇよ、遂に来ちまったよ。
今までの男子だけの成績であれば、今のところは赤団が1位。つまり、それを俺は守り抜かねばならない。


だが今、俺の中である決意が揺らいでいた。


俺が考えていた秘策のことだ。
最初は使う気満々だった。しかし、先程の暁君の話を聞いて考え直したのだ。

“魔術を使うこと”は正々堂々と戦っていることになるのか、と。

部長の言うことは確かに一理ある。でも卑怯ではないかという考え方もまた1つだ。


『位置について』


考えのまとまらぬまま、スタートラインに立った俺。
振り向かずとも1組の盛大な応援が俺にきているというのが分かった。


『よーい』


人生の内でここまで緊張した徒競走はあっただろうか。
暁君の意思を背負って走るという責任感を感じられた。

構えをとり、最終決断を迫られる俺。
だが、スタート直前
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ