第23話『正々堂々』
[1/8]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
いよいよ体育祭が開幕した。
いつの間にか俺の家族も応援に来ていたが、今のところは気づいていないフリをしておくことにする。
最初のプログラムは、俺たち1年生の『100m走』である。ルールは単純で、100mを走り切るだけである。
しかし人類はこの距離に真剣に立ち向かい、そして勝利を取ろうとしてきた。
昔の俺には、そんな情熱はなかっただろう。
だが、今の俺には“勝利”という二文字が目前に見えている。この秘策なら絶対勝てる…!
「三浦、ホントにやんのか?」
「部長だって言ってただろ? 別に卑怯なことじゃないよ」
入場直前の整列中、暁君が俺に声を掛けてきた。内容は俺の秘策についてである。
それに俺は、あの時に部長から言われた事をそのまま返答に使った。
「でもよ…」
イマイチ“卑怯”という言葉が引っ掛かる様子の暁君。
首をかしげながら、俺の秘策について考え込んでいた。
「暁君が心配することはないよ。それより自分の事を心配したら? 走るの苦手なんでしょ?」
「うっ…」
俺は「心配」というワードを器用に使い、話を変えた。
実際、暁君の走りについては心配なのだ。
でもその言葉は地雷だったらしく、一瞬で暁君の目からは光が消えてしまった。
「どうせ俺は負けるんだ……無様に最下位で…」
「…は、走り切ることに意味があるんだ! ほら、最下位でも拍手が貰えたりするじゃん!」
「アレは哀れみの拍手だよ…」
急に随分とネガティブな思考へ移り変わった暁君。
俺が何を言っても、全て後ろ向きな意味になってしまう。俺の言葉が悪いのか?
「えっと…」
「…よしわかった。俺にとって体育祭は恥晒しの場だ。だから俺は、お前と同じ方法を取ることにした」
何かを決意したというような様子でそう言う暁君。
そして“俺と同じ方法”というのはアレしかない。
「てことは『魔術』?」
「おう」
そう、俺は今日の競技で魔術を使うことにしていたのだ。部室での会話に影響されて。
暁君は話を続けた。
「俺の属性なら多分、偶然を装って最下位が目立たなくなるすることができるはずだ」
「え、何でそこ1位じゃないの?!」
俺は真面目にツッコむ。
そりゃそうだよ。俺の魔術の使い方は1位を取るためのもので、決して最下位を目立たなくする訳じゃないよ!
「暁君は、自分は最下位確定と思ってるの…?」
「今までの体育祭の徒競走で最下位以外を取ったことは無い。だが今回はそれを目立たなくすることができる!」
今の衝撃告白から察せたが、きっと暁君は今までの徒競走は極端にビリだったのだろう。そして今回は、魔術を駆使
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ