第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#22
戦慄の暗殺者[ 〜Rebirth Chronicle〜
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から零れる、
何の偽りもない、本当に本当に正直な気持ち。
想いはいつか、 「彼」 という一個の存在すらも超えて、
現在の “アイツ” を形創った 「時」 の流れにまで溯 り、拡がっていった。
そのシャナの心中で静かに滔々と沁み出ずる、
今まで体感した事のない緩やかで温かな存在の何か。
胸の中心で芽吹くようにゆっくりと湧き上がり、そして刹那の淀みもなく
意識の全領域に拡がって、自分の存在を充たしていく。
素直にただ、感謝したかった。
彼の存在を育んでくれた、全ての人々に。
その感覚に他の何にも代え難い感興を抱いたシャナは、
白い封絶が巻き起こす気流に長い髪を靡かせながら、
穏やかで優しい微笑を、小さく可憐な口唇に浮かべていた。
(……)
胸元のアラストールは、黙したまま少女を見守っていた。
表情にこそ現さないが、心中に浮かんだ一抹の驚きと共に。
少女は今まで、“封絶の中で微笑った事が無かった”
こんなに、穏やかな表情で。
まるで、暖炉の前で母親と会話をする娘のように、安らいでいる表情で。
少女の、シャナの、その使命に燃ゆる凛々しき表情は
これまで星の数ほど見てきた。
力強く、誇り高い子である事も知っていた。
しかし、こんなに優しい笑顔を浮かべる子だったとは。
戦鬼のようなフレイムヘイズの 「業」 の渦中にありながらも、
こんなにあたたかな心を微塵も失わない子だったとは。
不覚ながら、今に至るまで気づかずにいた。
(どうやら……我の取った 「選択」 は……間違いではなかったようだな……)
シャナに連れたのか、存在の裡で少しだけ笑みを浮かべたアラストールの、
その更に深奥で静かに形を成す、真の決意。
フレイムヘイズ “炎髪灼眼の討ち手” として、
今まで生きてきた名も無き少女。
その凄絶なる戦いの日々、これまでの 「運命」 を全て受け継ぎ、
そして今、新たに始まる!
どんなに深い絶望の中であろうとも、希望という 「星」 の光を
決して見失わない、気高き血統の者達との出逢いによって生まれた、
今、ようやく産声をあげる事の出来た、一人の 「人間」
“空条 シャナ” としての戦いが。
もう自分は、 「討滅の道具」 なんかじゃない。
今ようやく私は、 「人間」 になれた。
或いは 「転生」 した?
解らない、解らないけれど。
でも、今の自分は、フレイムヘイズである以前に、
一人の 「人間」 だと胸を張って言うことが出来るから。
最愛の人達から貰った、この世でたった一つだけの 「名前」 があるから。
だから、もう、淋しくはない。
その事に目を背けて、心を押し殺す必要もない。
だって、こんなに素晴らしい人
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