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八神家の養父切嗣
六十三話:“正義の味方”
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たナイフで邪魔になった左腕を自ら切り離しそのまま襲い掛かる切嗣。その瞳を見た瞬間スカリエッティは―――死を感じた。

「ぬぁあああああッ!!」

 感じてしまった恐怖を振り払うようにスカリエッティは雄叫びを上げ切嗣の無防備な腹を蹴り飛ばす。諸に食らったそれに威力を押し殺すことができずに切嗣ははやて達の近くまで吹き飛ばされる。

「おとん!?」
「はやて……下がっていなさい」
「でも…!」

 思わず駆け寄ってきたはやてを左手で制そうとして無くなったことを思い出し軽く笑う切嗣。しかし、はやてからすれば安心できるはずもない。なおも声をかけようとするが切嗣はそれを遮り立ち上がる。


「大丈夫、父さんは絶対に―――負けないから」


 どこまでも真っすぐで、どこまでも強い瞳に見つめられはやては悟る。
 この人はもう―――死ぬまで止まらないのだと。

「……分かった」
「うん。それから……ありがとう(・・・・・)

 決して引き下がらないという決意を理解してはやては頷く。そんなはやてに切嗣は様々な想いを込めたお礼を言う。家族に対して、娘に対して、自分を救ってくれてありがとうと。それは何も切嗣だけ想いだけではない。

 今は意識のないアインスも同じ想いだ。これが最後の会話になるかもしれない。だというのに、否、だからこその短い言葉に込めた想いをはやてはしっかりと受け取っていた。しかし、そう簡単に心の整理はできずに俯く。その時に、ある物を見つけた。

「あれ……これって……」

 切嗣が再びスカリエッティの下に歩いていく中、はやては切嗣が倒れていた場所に一発の銃弾が落ちているのに気付いた。恐らくは倒れた衝撃で懐から落ちたのだろうと結論付け拾い上げる。そして父の背中を見つめ、続いてしまってあったコンテンダー(・・・・・・)を見て何事かを決心するのであった。

「最後の別れは済ませたかね」
「お前の方こそ、遺言は考えたのか?」

 そんなはやての反対側では二人が息を荒げながら睨み合っていた。

「くくく、お互いに減らず口は顕在か」
「そのようだな。だが、それもこれで終わりだ」

 互いにこれが最後の攻防だと直感し覚悟を決めていた。互いに満身創痍、しかしその気迫は欠片たりとも衰えることはない。極限まで高まった闘志を隠すことすらなくぶつけ合う。


「カードを切ろう……さあ―――ついてこられるか」

「くくく! 君の方こそ―――ついてきたまえ!!」


 ―――そして最後の時が動き始める。

「うぉおおおおおッ!!」
「はぁあああああッ!!」

 風のようにナイフが舞い、濁流のような拳の連撃が踊る。どちらも死力。一歩たりとも引くことなくぶつかり合い続ける。互いに空間に罅が入
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