六十三話:“正義の味方”
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どないッ!」
体の頑丈さは戦闘機人であるスカリエッティが圧倒的に有利。全ての能力がない状態で戦っても彼の有利は揺らがないであろう。それを証明するように剣のような刺突が切嗣の体を何度も貫く。内臓が破裂し骨はへし折れ血を吹き出していく。しかし、それでも―――
「もとよりこの身は―――捨て身ッ!!」
―――衛宮切嗣は前へと進み続けた。
一切攻めの手を緩めることはない。その姿は嵐であった。如何なる攻撃を受けても止まることなく突き進む。本来の彼とは180度も違う戦闘スタイル。だが、今の彼にとってはそんなことなど頭にはなかった。
「お前が倒れるまで死んでも止まるつもりはない!!」
「小癪な…ッ!」
切嗣の腕が振るわれるたびに血が飛び散る。それはスカリエッティのものと、彼の手の甲から飛び散るものだ。彼の手の甲の骨は割れ外に飛び出てきている。見るからに痛ましい。しかしながら、彼は殴るのを止めなかった。
「ウォオオオオオッ!!」
獣のような咆哮が叫び渡る。否、今の彼は紛うことなき獣であった。しかしそれは地を這う卑しい獣ではなく、愛する者を守る誇り高き獣であった。気迫をもって彼は性能の差を上回る。このままいけば切嗣がスカリエッティの喉を喰いちぎる。はやて達の誰もがそう思った。
「私を―――舐めるナァアアアッ!!」
だが、スカリエッティの精神力はその状況を打ち破る。瞼が開かれ獰猛な瞳が覗く。それは獲物を刈り取る瞬間に捕食者が見せる勝利への確信。
「なに!?」
今まさに殴りかかろうとしていた左腕が掴まれる。とっさに危険を察知し払いのけようとする切嗣だったが時はスカリエッティに味方した。
「その腕を貰い受けるッ!!」
切嗣の腕が一瞬にしてあらぬ方向に折り曲げられる。まるで鉛筆をへし折るようにいとも容易く折られたそれからは骨がむき出しとなりグロテスクな様を見せていた。
「あははははは! 死なずとも片手ではもはや勝ち目はあるまい。この勝負、私の勝ち―――」
その光景に勝利を確信したスカリエッティは勝ち誇ったように叫ぶ。腕以外に攻撃手段がない人間の片腕をへし折る。それは常識で考えれば彼の言うとおりに勝利といっても過言ではなかった。だが、しかし。彼は忘れていた相手は―――
「それが―――どうしたァアアアッ!!」
「ガッ!? 折れた腕でだと…!?」
―――怪物と呼ぶ以外にない存在であることを。
折れて剥き出しになった骨で顔面を殴られ驚愕で目を見開くスカリエッティ。威力のある攻撃ではなかった。だが、意識の外から来た攻撃であり、何より、相手の底知れなさを感じさせる一撃は戦意を削ぐには十分すぎた。
「ハァアアアアアアッ!!」
懐から取り出し
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