第66話竜とスグ
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死ぬ。嫌、そんなの絶対嫌。助けてーーー
「助けてお兄ちゃん・・・!!」
「スグ・・・!!」
「!?」
今、あたしを呼ぶ声が聞こえた。それもお兄ちゃんがいつもあたしに対して呼んでくれる呼び方。その声が聞こえた方向から腕が伸び、あたしを強く抱きしめた。その人はあたしの兄・桐ヶ谷和人ではなく、一緒にこのジェットコースターに乗っていたーーー
「竜くん・・・!?」
「スグ・・・ウプッ!絶対・・・オエッ!守る・・・!!」
ジェットコースターによって乗り物酔いになっていた従兄、神鳴竜くんだった。その彼は乗り物酔いに苦しみながら、落下するジェットコースターからあたしが落ちないように強く抱きしめている。『スグは絶対守る』ーーーそう繰り返し叫びながらーーー
******
あのジェットコースターの恐怖の時間が終わり、竜くんはーーー
「オロロロロロロロロロロロロロ!!!!!」
「竜くんしっかりして!!!」
ずっと我慢していた物を吐き出している。あたしが背中を擦ってみたら、少しずつ顔色がよくなっていった。
「直葉ちゃん、こんなオレが言うのもなんだけど・・・大丈夫か?」
「はい。おかげで助かりました・・・」
あの時竜くんが助けてくれなかったら、あたしーーー絶対死んでた。だからこうして地面に足を着けていられるのも、全部竜くんのおかげだもんーーーそういえば、竜くんはどうしてーーー
「竜くん・・・どうしてあの時スグって呼んだんですか?」
「え?」
竜くんはあの時、あたしの事をスグと呼んだ。お兄ちゃんと双子って事もあって、完全にお兄ちゃんと見間違えそうだった。もしかしたらーーー
「・・・オレ、無意識に・・・本能的にそう呼んでたのかもしれない」
お兄ちゃんと同じ血が流れてるからーーーDNAレベルであたしをそう呼んでたのかもしれない。
「オレさぁ・・・」
あたしがそんな考え事をしていたら、竜くんが口を開いた。口を抑えてるのは、口臭を気にしてるのかもしれない。そして放たれた第一声がーーー
「オレさ・・・何か心のどっかで、キミの事を妹みたいに思ってたのかもしれない。だから和人みたいに・・・キミを呼んだんだと思う」
「!!!」
この言葉はーーーあたしの心の奥まで染み込んできてしまっていた。この言葉がすごく、すごく嬉しくてーーー気が付けばあたしは、竜くんに抱きついていた。
「お、おい・・・」
「ありがとう・・・!ありがとう・・・!本当に・・・本当にありがとう・・・!」
助けてくれてありがとう。あたしを妹と思ってくれてありがとう。そ
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