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第十八話
第十八話 切り札
華奈子達はその日の夜まずは塾の前に集まった。皆既に魔女の服に着替えている。
「いい?」
「うん」
華奈子の言葉に頷く。皆もう真剣な顔であった。
「皆さん」
そこへ先生が声をかけてきた。
「先生」
「いつも通りにやれば大丈夫ですからね」
「はい」
先生の言葉にも頷いた。
「ただ怪我には気をつけて。いいですね」
「わかりました」
いささか場違いな感じもしないではないがここは先生の言葉に従った。先生の言葉に従って間違いがあったことはないからである。それを考えても不思議な先生であった。
五人は先生に見送られて夜の街の中を進んだ。そこは華奈子達が住んでいる街の中である。
「何か昼と夜じゃ違うね」
「うん」
五人は寄り添って進んでいる。
「何か出てきそう」
「赤音ちゃん、実際に出るのよ」
美樹がそれに答えた。
「紫の魔女が。だから挑戦状を送ってきたんだから」
「そうだったね」
赤音はそれに頷いた。
「紫の魔女、一体何処に出て来るんだろう」
今夜は月はなかった。そのかわりに色取り取りの星達が濃紫の空に瞬いていた。華奈子達はそれを見上げながら夜道を進んでいた。
少し進んだ。すると何処から笛の音が聴こえてきた。
「あれは」
その音には聴き覚えがあった。あの笛の音であった。
「来たわね」
「紫の魔女」
「ええ」
上の方から声がした。五人の右隣の家の屋根からであった。
そこに紫の魔女がいた。彼女は一人屋根の上に立っていた。
「お久し振り」
「会いたくはなかったけれどね」
華奈子が悪態を交えてそう返す。
「一体何の用なの、今度は」
「貴女達に見せたいものがあって」
「あたし達に!?」
「ええ、そうよ」
彼女は答えた。
「貴女達に。是非見せたいものがあって」
「それは何なのかしら」
梨花が問うてきた。
「この前の決着をつける為でしょうけれど。よかったら教えてくれない?」
「わかったわ」
彼女はうっすらと微笑みそれに答えた。
「じゃあ見せてあげるわ。私の切り札」
「切り札」
再び笛の音が鳴った。さっきとは別の曲であった。
「今度は何!?」
暫くして地響きが聞こえてきた。そして華奈子達の前に何かが出て来た。
「これは・・・・・・」
それはゴーレムであった。一体の土の巨人が華奈子達を見下ろしていたのであった。
第十八話 完
2005・6・16
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