第十六話 三人目の妹との邂逅
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で『叱って』しまったのはどうなのだろう。
ほっ、と紀伊は吐息を漏らした。ようやく陣容が整い、反抗作戦が開始される段階に来たというのに、この重苦しい感じは何なのだろう。
トントン、と病室のドアがノックされた。はっと顔を上げた紀伊はよく通る声で答えた。
「はい!どうぞ。」
ガチャリと音を立てて開いたドアから現した訪問者の姿を見て紀伊は目をまん丸くした。
「あなたは・・・・!」
横須賀鎮守府にいた際に紀伊にピアノの弾き方を教えてくれ、色々この世界のことをレクチャーしてくれたその人だった。
「その様子だと、私のことをちゃんと覚えていてくれたようね。」
長い灰色の髪に優しげな大きな灰色の瞳、それでいて勝気そうなくっきりとした眉と涼やかな鼻梁の美貌の女性が後ろ手にドアを閉めて入ってきた。濃灰色の軍服を着て左肩に勲章の様なものを付けている。立ち上がろうとした紀伊をその人は手で柔らかく制した。
「以前は色々とお世話になりました。と、いいますか、お世話になりっぱなしで・・・・。」
深々と頭を下げた紀伊に笑い声が降ってきた。とたんに狭い病室にさぁっと気持ちいい風が吹き込んだような気がした。
「それが私の仕事だもの。全然気にしていないわ。だいたいあなたは誕生したばかりだもの。まだ周りの事なんてわからなかったはずだし。覚えてない?」
「ぼんやりと、です。」
そういえばあの時の日々のことはまるで夢のようにフワフワとして実感がなかった。覚えているのは明るい光の降り注ぐ部屋の中でよく目の前の人と話をしたことくらいだ。
「あの、すみません。私、あなたの名前を憶えていなくて・・・申し訳ないのですけれど。」
「そうね。私も敢えて名乗らなかったからな。よし!」
女性の視線は病室をさまよっていたが、やがて赤い丸い椅子を捕えた。座ってもいいかと聞いてから、椅子に腰を下ろした。
「私はヤマト海軍軍令部参謀部特務参謀室所属一等海佐、梨羽 葵よ。よろしくね。」
年齢は内緒、と最後に笑いながら付け加えた。
「よ、よろしくお願いします。大佐・・・さんなんですか・・・?」
「前世とやらの階級だとそうなるかな。でも現在のヤマト海軍の階級制度だと私は一等海佐。仕事はあなたたちのサポートをすること。だから人の体でこうして鎮守府内を歩き回れるわけ。」
そういえば、と紀伊は思った。艦娘以外を見たのが、提督以外ではこの人が初めてだった。
「あ、ごめんごめん。積もる話を本当はしたいんだけれど、その前に紹介したい人がいるのよね。いい?」
「え?え!?え、ええ・・・いいですけれど。」
急な展開についていけず、紀伊があいまいにうなずくと、葵はにっこりして入り口に声をかけた。
「いいわよ、入ってきても。」
ギイとドアがきしんでまた開いた。そこから姿を現した訪問者を見て紀
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