第十六話 三人目の妹との邂逅
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、私はあなたに忘れないでいてほしいの。戦場は違ってもかけるものはとても秤では測れないほど膨大で、そして大切なものばかり・・・・。」
それを絶対に忘れないで。と陸奥は静かに言葉を結んだ。
同時刻、横須賀鎮守府内ドック病室――。
紀伊は遅く目を覚ました。昨日は長旅の航海とその途上で起こった戦いで、心身の疲労がピークに達し、到着してメディカルチェックを受けるとすぐに病室で寝込んでしまった。軍医妖精は過労だといってしばらく安静にするように念を押して去っていったが、いったん目を覚ました紀伊は寝てもいられない気分だった。
理由は二つある。
一つ目は、3人目の妹のことだ。これまで讃岐、近江と出会ってきたが、まだ2番目の妹にはあっていない。出立前に近江に説明してもらったところによると、元々紀伊と尾張は前世の八八艦隊計画上のネームシップ及びその2番艦として建造が計画されていたという。それが軍縮条約が締結されたため建造中止になったというのだ。
近江も讃岐も素敵な妹だ。だが、彼女たちの名前は八八艦隊計画に上ってきていない。そのためかどうしても年の離れた妹のように思えてしまう。だが、他方尾張は違う。建造中止にされた自分と同じ生い立ちを持つ妹だ。彼女について紀伊はひそかに特別な思いを持っていた。言葉には表現できにくいが、それはいわば双子に対する感情と言ってもいいのかもしれない。
讃岐も近江も尾張の性格についてはあまり(讃岐については絶対的に)肯定的な見方をしていなかったが、それでも紀伊はあってみたいと思っていた。
そして、もう一つは赤城のことだ。横須賀への旅の途上、敵艦隊に襲われた際、艦載機を犠牲にして自分たちだけ逃げるわけにいかないと言った赤城。そして、以前自分を捕えている前世の忌まわしい記憶について語った赤城。
彼女の心の様相については紀伊はまだ測り兼ねていたが、いずれにしても赤城の心の中が平穏というには程遠い様相というのは間違いなさそうだった。
赤城は第一航空戦隊の双璧の一人だ。当然反抗作戦の際には前線に進出し、艦隊戦の援護や航空戦を指揮する立場にある。その指揮者が平静でない心胆で戦えば、確実に作戦のどこかに破たんが生ずるだろう。
それを上層部は承知しているのだろうか。それを他の艦娘たちは知っているのだろうか。
それを・・・提督は知っていたのだろうか。
赤城と会って話さなくてはならないと紀伊は思った。赤城の気持ちを確かめたいという想いとは別に、横須賀への途上に赤城を罵倒してしまった格好になったことを紀伊は気にしていた。もちろんあの場では悠長なことは言っていられない状況下だったことは事実である。だからといって大先輩であり精鋭の第一航空戦隊の双璧の一人を、まだ本格的に就役して間もない自分が皆の面前
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