第十五話 横須賀へ
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あ、私たちも一緒にいければよかったんだけれどなぁ・・・・・。」
「ごめんね。」
翔鶴がすまなそうに俯いたので、瑞鶴は慌てた様子で、
「あ、違うの違うの!そういう意味じゃなくて・・・私たちも後から一緒に行って活躍できたらなって思っただけ。」
「私もそう思うわ。でも、一航戦の先輩方がいらっしゃるし、そこに私たちが割り込むわけにはいかないでしょう?序列も実力も私たちは遠く及ばないもの。」
「そんなことない!翔鶴姉は絶対に一航戦に負けはしないし、私だってそうだもの。だいたい大飯ぐらいの赤城にとっつきにくい加賀なんかよりも私たちの方がずうっと艦隊を組みやすいと思うけれど。」
翔鶴は目を細め、ちょっと困ったように笑った。
「もう!駄目でしょう?そうやって先輩方のことを悪く言うのは。」
「わかってるわよ、でも・・・・。」
「でも?」
瑞鶴の「でも」に何かただならぬ気配を感じて、翔鶴は思わず聞き返した。
「・・・・赤城、大丈夫かな、と思って。」
「どうして?」
意外な言葉が妹の口から出てきたことに翔鶴は驚いた。
「本格的な反抗作戦の始動が決まった頃、あれは南西諸島作戦が始まる少し前のことだけれど・・・・・。」
ある晩瑞鶴は急ぎ足で空母寮に向かっていた。その日は非番だった。図書室で好きな音楽を聴きながら本を読んでいたら、ついつい時間がたつのを忘れてしまったのだ。慌てて図書室を飛び出したときには、もう10時近かった。息せき切って空母寮の前庭――うっそうと木立が生い茂り、街灯もなく不気味な印象を与える庭だった――に飛び込んだところ、誰かが立っているのが見えた。木に額を押し付けてじっと動かなかった人影ははっとしたように瑞鶴を見た。赤城だった。
「その時は『どうしたの?』って聞いてもお茶を濁されて答えてくれなかったのだけれど、でも、今思うとただ事じゃなかったなって思うの。」
「どうしてそれを提督なり私なりに言わなかったの?」
翔鶴は驚いていた。そんな話は初耳だったのだ。
「だって・・・認めるのはものすごく悔しいけれど、赤城は一航戦の双璧なんだもの。だから心配することはないかなって――。」
「双璧だからって、鋼鉄の心は持っていないわ。赤城先輩も艦娘です。不安を感じることもあれば、夜眠れないことだってあります。きっと本格的な攻略作戦のことを考えて眠れなかったのだわ。」
「ごめん・・・。」
「いいえ、よく話してくれたわね。ありがとう。帰ったら提督にこのことを内密にお話して判断を仰ぎましょう。・・・・理由は、わかるわね?」
「・・・・精神的に不安定な赤城が攻略作戦で何かミスを犯すかもしれないし、それがみんなの命にもかかわるかもしれない、ってこと?」
翔鶴はうなずいた。怖いくらいに真剣な表情で。
横須賀鎮守府――。
埠頭に出ていた大
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