暁 〜小説投稿サイト〜
艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第十五話 横須賀へ
[7/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いる。その表情はわからないが、やがて絞り出すような声がした。


「また、艦載機を盾にして、私たちだけ逃げるんですか・・・・。」


紀伊もビスマルクも、加賀も近江も、他の艦娘たちも一斉に赤城を凝視した。
この襲撃の直前、艦載機が引き上げてきていた。だが、その数は少なからず減っていた。直掩部隊を残し、いったん艦載機隊を収容し終わった紀伊たちだったが、その損害にしばし言葉を失っていた。
「先ほどの戦闘でどれだけの子たちが犠牲になったか・・・。これ以上、そんなことができると思いますか?!」
「赤城さん。」
「私は非力です。自分では爆撃も雷撃もできない。あの子たちに頑張ってもらわないと何一つできないんです。だからこそ、あの子たちを犠牲にして自分が生き残ることに私は耐えられない!」
「バカなことを言わないで。それではあなたもここに残るというの?自殺行為よ。それとも、ここにいるすべての艦隊をあなたや私の艦載機のために犠牲にするというの?砲撃戦闘で誰かが犠牲になってもいいというの?」
加賀の言葉は徐々に熱してきた。赤城は一瞬うろたえたようだったが次の瞬間激しく首を振っていた。
「違います、違います!!それは――。」
「違わないわ。結果はそういうことになる。」
両者にらみ合ったままかたくなに動かなかった。これには紀伊もビスマルクもそしてほかの艦娘もおどろいていた。普段一航戦の二人は双璧と呼ばれ、実力は伯仲していたが、とても仲が良かったからだ。
「赤城さん!!」
紀伊は叫んでいた。
「ならば私の艦載機を発艦させます。赤城さんは先行してください。」
「姉様?!」
近江が愕然としたようにそばに寄ったが紀伊はやめなかった。赤城はきっと紀伊をにらんだ。
「あなた、自分の言っていることがわかっているの?あなたの艦載機は――。」
「疑っているんですか!?」
紀伊の言葉が矢のように赤城を貫いた。
「疑っているんですか?!自分たちの艦載機(子)のことを!!そんなに軟弱なんですか!?」
「紀伊、それはさすがに――!」
ビスマルクが言いかけた言葉を飲み込んだ。
「あんなに練習していたのは、なんだったんですか!?栄光の第一航空戦隊の双璧の呼び名は嘘だったんですか!?」
赤城の眼が見開かれた。紀伊は何かに突き動かされるように目の前の一航戦の双璧の一人に言葉を叩き続けていた。
「私は信じています。いいえ、犠牲をゼロにできるとは思っていませんし、胸が痛くないと言ったらウソになります。悲しくないわけないじゃないですか!!でも、それ以上にずっとずっと私はこの子たちを信じています!!絶対敵の重巡艦隊を足止めしてくれるって!!」
「・・・・・・。」
「時間がありません。私は行きます!!」
「待って。」
後ろで声がした。加賀がこちらを見ている。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ