草庵を支配する者
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、と満面の笑みを浮かべた。
「貴方がたは少々、心得違いをなさっておられます。いざり口をくぐったその時より」
「この草庵を支配する者は、主人である私でございます」
奴は扇子を帯に挟むと、間抜けに壁に突き刺さる二振りの刀をまじまじと眺めた。
「そちらは肥前の、そちらは備前長船の業物でございますなぁ」
「刃を見ただけで分かるのか!?」
「商人の端くれでございますから。銘までは、分かりかねますが…」
―――結構な御手土産を頂き、ありがとうございます。
そう頭を下げられては、取り返す術はない。俺たちは、しょんぼりといざり口を潜った。
待合で脇差を返されたが、今更斬り合いを始める気にはなれず、俺と刺客はとぼとぼと茶室を後にした。斬り合いなら外でやれ。そんな当たり前のことを商人ごときに、えらい遠回しに云われ、今の俺たちに武士の面目など…。
「今にして思えばあの商人…我々の仕込み杖を見抜いてあの庵に案内したのだな」
刺客が、そう呟いた。
「そうだな。元はといえば茶室に殺生の道具を持ち込んだ俺たちが…」
ん?ちょっと待て!?
「あいつ、自分は匕首持ち込んでなかったか!?」
「然り!!…あんの野郎、戻って文句云ってやる!!」
俺たちが駆け戻った頃には、草庵に奴の姿はなかった。
茶人の名は宗易。後に織田信長、豊臣秀吉のお抱え茶頭となる「千利休」その人である。
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