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八神家の養父切嗣
六十二話:“エミヤ”-Time alter-
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「そっちこそ、僕の能力で僕に勝てると思うなよ!」

 人の視力では追えない領域に達しながらスカリエッティは拳を切嗣に叩き込み、切嗣はコンテンダーでスカリエッティに殴り掛かる。どちらも相手の手の内を知り尽くしている。相手の策は最初から知っているようなものなので搦め手など通じない。

「その程度で私が倒れるものかッ!」

 頭部に鈍器による一撃を食らっても不死身に近いスカリエッティは死なない。逆に新しい黒鍵で切嗣の心臓を貫く。

「さあ、どうだね! 心臓を貫かれた気分は!?」
「生憎―――この体は、もうその程度じゃあ死んでくれないんだ…!!」

 心臓を刺されたにもかかわらず一瞬の動揺も見せることなく黒鍵を素手でへし折る。切嗣の体は外部から操作されている人形であり、その体の機能はもはや人間のものではない。骨が折れようと腕がちぎれようとも戦い続ける。停止している以上は時が動き出さない限り死ぬこともできない。それ故の不死身だ。

「お前の武器を返してやるよ…ッ!」
「なッ!?」
「そらぁッ!!」

 お返しとばかりにコンテンダーを横からフルスイングしスカリエッティを吹き飛ばす。そのあまりの衝撃の強さにデバイスは完全に大破するが気にも留めない。

「く…! 今度は私からのお返しだよ!」
「ちっ!?」

 だが、スカリエッティもただでは終わらない。吹き飛びながらも右肩と左足に黒鍵を投擲して切嗣の猛攻を物理的に止めさせる。すぐに黒鍵をへし折るがその僅かな時間の間にスカリエッティは態勢を整えていた。

「はぁ…はぁ…やはり同じ力同士だ。小細工ではいつまで経っても勝負が決まらないね」
「同感だ。お前如きにこれ以上無駄な時間は使いたくない」

 お互いが握り拳を固める。切嗣はナイフをまだ持っている。スカリエッティはいつでも武器を作り出せる。だが、この戦いは武器では決まらない。重要なのはどちらかが真に己の敗北を認めるか否かだ。

「同じような顔で同じ力…これじゃ鏡だ。自分と戦うなんてつくづく苛立つ事をするよ、お前は」
「寧ろハンデだと思ってほしいね。同一人物であることで相手の戦略が読めるんだ。そういうのは得意だろう?」

 方や無表情、もう片方は狂気の笑み。どちらがどちらの表情であるかなどいう必要もないだろう。極限の戦いの中二人の男は同じ力を操りながらも対極の存在であり続けた。


「おまえには負けない。誰かに負けるのは構わない。だが―――自分には負けられないッ!!」


 自分のために、アインスのために、何よりはやて達の未来のために負けるわけにはいかない。既に人間として死んでいる男は、それでも人間として掴んだ小さな安らぎのためにブリキの体を動かす。


「つまるところ、私と君の戦いは外敵と
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