六十二話:“エミヤ”-Time alter-
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け隔てなく人々を救い、分け隔てなく殺して』
どこまでも平等に全ての人に救いを与え、全ての人に死を与えてきた。
『人の世の理を超えた理想を追い求めた』
初めから壊れていた夢を追い求め荒野を一人歩き続けた。
人が人であるべき原点を踏み越え、機械として全てを理想に捧げてきた。
『―――だというのに』
だが、彼の心は凍り付くことなどなかった。壊死することなどなかった。
心だけはいつまでも血の涙を流し続けてきた。
『彼はあまりにも人間すぎた』
何故なら彼は正義という集団秩序の味方でありながら家族を愛してしまったから。
寄り添ってくれる女性を守りたいなどと願ってしまったから。
娘に幸せになって欲しいと願ってしまったから。
『そんな―――』
そう、どこまでも愚かな男だ。結局願いは叶えられず手の中には何一つ残らない。
ただ、ひたすらに愚かな人生。だが、そんな無意味な人生だったからこそ―――
『―――愚かな男の物語を始めよう』
―――この胸に確かに価値あるものを得た。
世界が二つに別れる。空も、大地も、空気さえも二分される。片側は全てが乾ききったスカリエッティの心象風景。そしてもう片方は―――雪が舞い散る闇夜の雪原だった。
「固有…結界…ッ! 馬鹿な、一人で展開できるはずが…!」
「一人じゃない―――二人だ」
切嗣一人で固有結界を展開できるのはあり得ないと叫ぶスカリエッティに切嗣はハッキリと告げる。この世界は二人で創り上げたものだと。月も星もない闇夜。彼の人生は見えない月や星を追いかける暗闇の夜のような旅路であった。
全てを救おうとした道の果ては全てを失う断崖だった。月の明かりも、星の明かりすらも、もはや見えはしない。月は無く星も無く道は闇に消えた。だが、それでも―――雪だけは優しく男の体に降り注いでいた。
「僕とアインス、二人の残りの命全てを使ってお前を―――人間に引きずり落してやったぞ」
神とは唯一無二であり、絶対の存在であるからこそ神なのだ。そこに同じ能力を持ち、同じ力を持った人間が入り込んで来れば―――神は人間へと堕ちる。
「くくく…くはははは! そうか、そうかね! 最後の命を全て使い切って固有結界を展開したのか! 娘を守るために夫婦揃って、最後の一瞬までその命を燃や
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