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八神家の養父切嗣
六十二話:“エミヤ”-Time alter-
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完全なる機械と化した。与えられた命令に従い動くだけの存在。それを自ら望んだのだ。これを狂っていると言わずに何というのか。

「膨大な魔力制御のリソース、限界を超えて動かされる身体の損傷。……確かにそれらに目を瞑れば可能だ。そしてこの世界に来られたのはオリジナルゆえか」

 自分を超えた狂気を見せつけられ冷静さを取り戻すスカリエッティ。そうすることで新たな疑問も見つかってくる。

「しかし妙だね。時間停止を行えば意識も働かないはずだが……今君の人格が表に出ているということはリインフォースTの方が停止した人格を担っているのかね?」
「そうだ。どちらも死にかけだが戦闘に秀でた僕が表に出ているに過ぎない」
「くくくく! つまり妻を犠牲にして娘を救いに来たというわけか!」

 スカリエッティの愉悦に満ちた言葉に切嗣は静かに目を瞑る。後ろでははやてやスバルがやりきれないといった表情でその背中を見つめる。かつての切嗣であれば罪悪感で何も答えることができなかったであろう。しかし、今は違う。

「確かに客観的に見ればそうだろうな。でも、これは犠牲じゃない。親が子どものためにその身を削ることは犠牲ではなく―――愛と呼ぶんだ」

 かつて愛を否定し愛に救われた男が静かに語る。言葉の意味で言えば親が子どものために死ぬのは犠牲というだろう。しかし、その尊い行為は、海よりも深い愛情は単純に犠牲という言葉では言い表すことなどできない。全くの別物だ。

「それにアインスは僕と共にいる。決して一人で戦っているわけじゃない。意識がなくとも、死にかけであろうとも、僕達は二人で戦っているんだ」

 右手を音の鳴らない心臓の上に乗せる。アインスは切嗣に言った、共に家族を守ろうと。その結果として自分達が死のうともそれは犠牲ではなく、未来への―――希望なのだと。



『―――とある男の話をし(A man of story.)よう』

 それは絶望の果てに遂に答えを見つけた男の人生。

『男はこの世の誰もが(He is holding)幸せであって欲しいと願(on a foolish dream.)った 』

 固有結界内の空間がさらに歪み始める。それに気づきながらも誰一人として動かない。男の人生を謡った歌が余りにも物悲しいが故に。誰もが影を糸で縫い付けられたように動けない。男の愚かな夢の後だけが時を流れる。

『だが、理想は絶望に堕ち(But, he put weak to)男を天秤の計り手へと変えた (thousand swords without mind.)

 全てを救おうとした男の理想は呪いとなりその身を焼き殺した。
 欠片も望まぬままに心と体を切り離し弱者を切り捨てるもっとも忌むべき存在になり果てた。

『分
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