125部分:第百二十四話
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第百二十四話
第百二十四話 素顔
とりあえず華奈子は無事だった。だが紫の魔女の姿は見えなかった。
「逃げたのかしら。それとも」
「皆、見て」
華奈子が離れた場所を指差す。そこに魔女がいた。
魔女は仰向けに倒れていた。その周りにはタミーノとフィガロがいる。倒れている主を守っているのだ。
「御主人様には」
「指一本触れさせませんよ」
「くっ」
「仕方ないわね」
「ですが華奈子様」
二匹は華奈子に対して言った。
「この勝負、貴女の勝ちです」
「御見事です」
「そう」
華奈子はとりあえずその言葉に納得した。
「じゃあそれでいいわ。あたしは魔女に勝った」
そしてそれで満足することにした。
「それでいいのよね」
「はい」
「それ以上を求められるのなら我等にも覚悟があります」
身体を触れるのも顔を覗き込むのも許すつもりはなかったのである。二匹は忠誠という点でも立派な使い魔であった。
「宜しいですね」
「ええ」
華奈子は頷いた。
「勝ったからね」
「はい。ではお引き下がり下さい」
「また。御会いする日まで」
「わかったわ」
華奈子はそれでその場を去った。四人と使い魔達も。後には魔女とその使い魔達が残っていた。
「あの」
「ええ、わかっているわ」
紫の魔女には意識があった。紫の法衣はボロボロだったが何とか無事であった。
「・・・・・・負けたのね」
「はい」
「残念ですが」
使い魔達はそれに応える。
「仕方ないわね」
魔女はその敗北を受け入れた。
「華奈子にだけは負けたくはなかったけれど」
そう言って帽子を取る。そこから現われたのは何と美奈子であった。
「負けちゃったわね」
そして苦笑いを浮かべた。
「華奈子も。腕をあげたわね」
「これから。どうされますか?」
タミーノがそんな彼女に声をかけてきた。
「これから?」
「はい」
「また。戦いを挑まれますか?」
「そうね」
だが紫の魔女、いや美奈子はそれにはすぐに答えなかった。暫く不思議な笑みを浮かべてそこに座り込んでいるのであった。敗れてもその顔は何故か晴れやかなものであった。
第百二十四話 完
2006・6・17
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